研究課題/領域番号 |
16K18844
|
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
松原 亮介 神戸大学, 理学研究科, 准教授 (90401223)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 光化学 / 光感受性保護基 / ニトリル |
研究実績の概要 |
本研究では「光感受性ニトリル保護基の開発とそれを用いた光応答性NOドナーフロキサンの創製」を具体的な目的と設定した。 NOは様々な生理活性を有し病理解明や創薬の標的分子として注目されているが、局所への定量的供給が困難であるため、NOを用いた生理学実験が制約を受けているのが実情である。申請者は、フロキサンを母骨格とし、光照射に応答してNOを定量的に放出する分子を創製する。光応答性をフロキサンに付与するため、これまでに全く報告例のない光感受性ニトリル保護基の開発から始めることとした。 光感受性ニトリル保護基として、オキシムを設定した。オキシムは酸化状態がニトリルと同じであるため、レドックスニュートラルにニトリルへと変換できるものと考えた。光によるスイッチングを可能にするため、オキシムの安息香酸エステルを基質とした。合成はアルデヒドから二段階で行った。 オキシムの安息香酸エステルに対して光照射を行ったが何も変化しなかった。これは、ニトリル生成においては基質の光励起状態が必要なわけではなく、一電子移動反応が進行する必要があるのではないかと予想を立てた。そこで、光励起されると酸化還元力が変化し、大きな還元力を有する励起種が生成する光増感剤を検討することとした。よく知られた光増感を数種類試したところ、いくつかの光増感剤を用いた場合に期待した通りニトリルが生成することが分かり、光感受性ニトリル保護基のプロトタイプとなる分子デザインを確立することができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度で光誘起電子移動を利用したニトリルの生成を行う予定でいた。計画通り、基質の合成と反応検討を行うことができた。その結果、ニトリルの生成を確認することができたため、現在までの進捗状況としてはおおむね順調に進展していると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
現在のところ、いくつかの課題がなお残されている。 一つは、光増感剤を使用する必要がある点である。今後細胞や生体内での応用を考えているため、非常に薄い濃度で用いる必要が生じる。光増感剤を別途基質に対して添加する必要があることは、反応速度が薄い濃度下では著しく低下する恐れがある。 二つ目の課題としては水溶性の問題である。上記の理由から基質や増感剤には一定以上の水溶性が要求される。 そこで今後は、光増感剤と基質が一体化した分子を創製する予定である。また、その分子に水溶性の置換基を導入することで、溶解度の向上を試みることとする。光増感剤と基質を一体にすることができれば、反応速度が濃度の影響を受けることはない。また、応用を考えた場合に、操作もより簡便になるため、集中的に検討を行うこととする。 その後、開発したニトリル保護基を実際にNOドナーに付与する検討を行う。これにより、光照射を行うことでNOが放出される分子を創製し、生理学実験などにも利用できる分子を目指す。
|
次年度使用額が生じた理由 |
消耗品代が予想より少なかったため。
|
次年度使用額の使用計画 |
少額の消耗品代に充当する。
|