最終年度においてはこれまでに合成してきた触媒を用いて不斉触媒反応を行い、触媒の機能性を評価しつつ、得られた生成物の有用性を高めるため、新規骨格への変換反応を検討することを中心に研究をおこなった。 ペプチド有機分子触媒のコンフォメーションの制御に関してはジ置換アミノ酸やかさ高いLーαーアミノ酸を用いたり、ペプチド側鎖上での架橋形成を利用することで達成した。反応に関しては、例えばマロン酸エステル類のα,β不飽和カルボニル化合物への不斉マイケル付加反応をおこなった。反応は非常にきれいに進行し、収率と不斉収率に関しても高い値が得られた。基質の適用範囲に関しても検討したが、α,β不飽和カルボニル化合物のβ位に関しては、各種アリール基のほか、アルキル基や、2-フリル基、アルキニル基に関しても提供可能であり、一方、α,β不飽和カルボニル化合物のα位に関してはメチル基やノルマルプロピル基等、長さの違うものであっても同程度の立体選択性が得られた。 さらに、得られたマイケル付加体の有用性を高めるため、新規骨格への変換反応を検討した。まず得られたマイケル付加体のカルボニル基をネオペンチルグリコールで保護したのち、エステル部位を水素化リチウムアルミニウムで還元し、環化前駆体であるジオールへと変換した。最後にジオールをトリメチルシリルトリフルオロメタンスルホネートとトリエチルシランで処理し環化することで、2,4,5ー三置換テトラヒドロフラン環の構築に成功した。この反応では、ペプチド触媒反応で得られた不斉中心を利用し、一つの反応で一挙に2つの立体中心を得ることができた。
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