研究課題/領域番号 |
16K18852
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
日下部 太一 東邦大学, 薬学部, 講師 (00600032)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | パラジウム / 複素環合成 / C-グリコシド |
研究実績の概要 |
平成28年度は0価パラジウム触媒下、無保護のグリカールの直接活性化を経るC-グリコシド合成を検討するための予備検討を行った。すなわち、グルカールの部分構造であるアリルアルコールと0価パラジウムから直接発生させたπ-アリルパラジウム種を用いて、o-アルキニルチオフェノール誘導体、o-アルキニルアニリン誘導体およびo-アルキニルフェノールを活性化し、触媒的に3位にアリル基を有するベンゾチオフェン、インドールおよびベンゾフランが得られることを明らかにするため検討を行った。 まず、原料であるo-アルキニルチオフェノール誘導体、o-アルキニルアニリン誘導体およびo-アルキニルフェノールを文献の方法に従い合成した。次にo-アルキニルチオフェノール誘導体を基質とし、大嶌等の反応条件(Org. Lett., 2004, 6, 4085.)を参考に、アリルアルコール存在下、水溶性ホスフィン配位子であるSodium Diphenylphosphino -benzene-3-sulfonate (tppms) を用いてパラジウム触媒および溶媒の検討をした。具体的には、パラジウム触媒としてPd(OAc)2、Pd(acac)2、Pd2(dba)3・CHCl3、[Pd(allyl)Cl]2、Pd(PPh3)4、溶媒は酢酸エチル、THF、DME、ジオキサン、トルエン、ヘキサンなどの有機溶媒と水との二相系もしくは水中で反応を行った。その結果、Pd2(dba)3・CHCl3およびtppms存在下、水/ジオキサン中、アリルアルコールとo-アルキニルチオフェノール誘導体から3位にアリル基を有するベンゾチオフェンが収率良く得られることを見出した。さらに基質一般性を検討したところ、o-アルキニルアニリン誘導体およびo-アルキニルフェノールを用いた場合でも同様に反応が進行することがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は0価パラジウム触媒下、無保護のグリカールの直接活性化を経るC-グリコシド合成を検討するための予備検討を行った。その結果、アリルアルコールと0価パラジウムから直接発生させたπ-アリルパラジウム種を用いて、o-アルキニルチオフェノール誘導体、o-アルキニルアニリン誘導体およびo-アルキニルフェノールを活性化し、触媒的に3位にアリル基を有するベンゾチオフェン、インドールおよびベンゾフランが得られることを明らかにできたため。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度以降は予備検討の結果をもとに、無保護のグリカールの直接活性化を経るC-グリコシド合成を検討する。具体的にはグルカールとo-アルキニルチオフェノール誘導体を原料とし、水溶性ホスフィン配位子であるtppms 存在下、パラジウム触媒および溶媒の検討をする。パラジウム触媒としてPd(OAc)2、Pd(acac)2、Pd2(dba)3・CHCl3、[Pd(allyl)Cl]2、Pd(PPh3)4、溶媒は酢酸エチル、THF、DME、ジオキサン、トルエン、ヘキサンなどの有機溶媒と水との二相系もしくは水中で反応を行う。反応が進行しない場合は、グルカールの3位の水酸基を活性化するための添加剤を検討する。具体的には、酢酸、安息香酸、1-アダマンタンカルボン酸、Ti(Oi-Pr)4および二酸化炭素を共存させ反応を行う。なお、生じたアリールC-グリコシド結合の立体化学はNMR測定により決定する。反応条件を最適化した後、o-アルキニルチオフェノール誘導体の基質一般性を検討する。この結果をもとにo-アルキニルアニリン誘導体およびo-アルキニルフェノールについてグルカールとの反応を検討する。次に合成的応用として、グルコース再吸収抑制作用が報告されているインドール誘導体の合成を行う。当初計画どおりに進まない場合は文献の方法に従い、グルカールの4位および6位の水酸基をp- メトキシベンジリデンアセタールもしくはジメチルアセタールで保護した後、Pd触媒、配位子および溶媒の検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究室の移転があり、予定していた機器の購入が間に合わなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
生じた次年度使用額を使用してEYELA社製パーソナルシンセサイザ PPM-5512および冷却水循環装置 NCB-2410の購入を計画している。
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