研究課題
申請者らは、これまでにアルツハイマー病アミロイドβタンパク質が脂質膜に結合し、凝集・毒性体形成を起こす過程を明らかにしてきた。しかし、凝集過程のターニングポイントとなる初期会合体の、詳細な構造と凝集における機能は明らかでない。そこで、申請者の開発している脂質ナノ粒子上にアミロイドβを隔離することで、凝集初期の自己会合状態を制御し、会合体を解析できると仮説を立てた。ナノ粒子上のアミロイドβの会合数、二次構造、線維形成能を計測し、この仮説を検証し、初期会合体の機能構造を明らかにする。2017年度は作成したナノ粒子存在下とアミロイドβの相互作用およびアミロイド線維形成への影響について詳細に評価した。ナノ粒子存在下でアミロイドβを緩衝液中でインキュベーションすると、チオフラビンT蛍光強度の増大が見られたことからアミロイド線維の形成が示唆された。透過型電子顕微鏡観察によって線維状の凝集体が形成されていることが確認された。ナノ粒子を構成する脂質としてDMPC/DMPG(1/1)混合膜を用いた場合、径の大きいナノ粒子ではアミロイドβの線維形成が促進されたのに対して、粒子径の小さい粒子ではアミロイド線維が形成されなかった。また、ナノ粒子に結合したアミロイドβの構造を調べるため、ナノ粒子形成に使用する両親媒性ペプチドASPP1を構成するアミノ酸をD体に置換したD-ASPP1を合成した。ASPP1ナノディスクとD-ASPP1ナノディスクを等量混合することで、ナノ粒子由来のCDシグナルがほぼ完全に消失し、共存するアミロイドβのシグナルを観測することが可能となった。その結果、粒子径の大きい粒子に結合したアミロイドβはβシート構造を取り、小さいナノ粒子存在下ではランダムコイル構造を取ることが明らかとなった。
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