研究課題/領域番号 |
16K18862
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
渕上 由貴 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(薬学系), 助教 (60736403)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 脳指向DDS / 超音波応答性ナノバブルリポソーム / 遺伝子デリバリー |
研究実績の概要 |
本研究では、超音波応答性ナノバブルリポソームと超音波照射を組み合わせた超音波応答性DDSを基盤として、効率的で安全性の高い脳指向DDSの開発をおこない、低分子薬物や遺伝子の脳送達に寄与する支配因子の解明と安全性に関する影響を明らかにすることを目的とする。 本年度ではナノバブルリポソーム製剤を構築し、その血液脳関門透過のメカニズム解明をおこなった。脳マイクロダイアリシス法を用いた脳内薬物動態解析を通じ、超音波照射強度、超音波照射持続時間、ナノバブルリポソームの投与量が脳送達へ及ぼす影響を評価した。その結果、ナノバブルリポソームの投与量の上昇に伴い、併用した5-FUの脳内濃度は上昇した。このことから、ナノバブルリポソームの投与量、すなわち超音波造影ガスの投与量が脳送達に影響を及ぼすことが示唆された。 そこで次に、超音波造影ガスの投与量が脳への遺伝子デリバリーに及ぼす影響を検討するため、遺伝子とナノバブルリポソーム、カチオン性ポリマーの複合体であるナノバブル複合体を用いて評価をおこなった。以前、我々の研究グループで見出したリポプレックスの膜安定化が可能なsurface charge regulation (SCR) をナノバブル複合体に応用し、超音波造影ガスの封入量を向上させた結果、遺伝子発現量が通常のナノバブル複合体と比較して高くなった。また、ClearT2による組織透明化法を用いて遺伝子発現部位を評価した結果、通常のナノバブル複合体ではほとんど発現は観察されなかったが、SCRにより超音波造影ガスを多く封入したナノバブル複合体では血管上のみならず血管を超えた部位にも発現がみられた。これらの結果から、脳における超音波応答性DDSでは、超音波造影ガスの投与量が脳送達の支配因子の一つである可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度に予定していたナノバブルリポソーム製剤の構築と超音波照射条件の最適化は計画に従って終了し、血液脳関門透過性亢進のメカニズムの検討についても、ほぼ計画通りに実行している。
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今後の研究の推進方策 |
今後、脳における超音波応答性DDSを発展させるため、BBB透過性亢進の持続時間などの詳細なメカニズムを明らかにし、その制御条件を見出す。さらに、疾患モデルマウスを用いた、超音波応答性DDSの有効性の検討を進める予定である。
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