研究課題/領域番号 |
16K18863
|
研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
麓 伸太郎 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(薬学系), 准教授 (70380988)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 遺伝子・核酸工学材料 / 遺伝子導入機構 / エンドサイトーシス / 細胞間差 / リポソーム |
研究実績の概要 |
細胞間差の少ない非ウイルスベクターを開発するためにこれまで機構解析を行い、解析結果より、トランスフェクション中の粒子径増大を抑え、発生する酸化ストレスを制御する必要性が示されている。粒子径増大を防ぐためには、ポリエチレングリコール(PEG)修飾が有効であるが、PEG修飾により細胞取り込みやエンドソーム脱出までも阻害されてしまう、いわゆるPEGのジレンマが存在する。 そこで本研究では、リポプレックスのPEG修飾に脱離可能なPEG脂質を用いたうえで、新たなPEG修飾タイミングとして、複合体形成時にPEG修飾が施されるSyn-insertion法を考案した。Syn-insertion法によれば、リポプレックスの粒子径を小さくでき、さらに肺を回避しつつ肝臓における遺伝子発現の低下を抑えることが可能であった。このSyn-insertion法を発展させ、脂質・炭酸カルシウム・プラスミド粒子(LCC)を作製することに成功した。エチジウムブロマイドインターカレーションアッセイにより、プラスミドが効率的に粒子内へ内封されていること、HepG2細胞における遺伝子発現効率が高まることが確認できた。 酸化ストレスの制御に関しては、種々の活性酸素消去剤について検討し、なかでもエダラボンによりHepG2細胞における遺伝子発現効率が高まることが示された。そこでエダラボン封入リポソームを作製したところ、より低濃度で高い遺伝子発現増強効果が得られた。これは、リポフェクション時において発生する活性酸素を選択的に除去することができた結果だと考えている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Syn-insertion法については、原著論文として公表できた。また、酸化ストレスの制御についても、学会発表を行った。このように、着実に成果を出して、それを学会発表または論文公表しており、おおむね順調に進展していると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
遺伝子発現を増強することができたので、フローサイトメーターを用い、遺伝子発現の細胞間差を評価していく。その際に、細胞取り込みおよび酸化ストレスも同時に測定し、遺伝子発現の細胞間差との関連性を解析していく。また、実験動物(マウス)レベルでも遺伝子導入を行い、組織透明化により細胞間差を解析していきたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
概ね計画通りに進行し、酸化ストレス制御の実験については、実験動物を使用するところまで進んだが、脂質・炭酸カルシウム・プラスミドナノ粒子については、改善の余地が判明し、動物実験に進まなかったため、繰越金が発生した。
|
次年度使用額の使用計画 |
脂質・炭酸カルシウム・プラスミドナノ粒子についても、試験管レベルで改善できており、今年度には動物実験を行う計画である。
|