研究課題/領域番号 |
16K18868
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
島本 茂 近畿大学, 理工学部, 講師 (00610487)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | プロスタグランジンD2 / 等温滴定型熱測定 / 核磁気共鳴法 |
研究実績の概要 |
本研究では、睡眠誘発物質であるPGD2の合成と輸送を担うL-PGDSの酵素反応および生成物放出のメカニズム解明を目的としている。これまでの研究から、基質と生成物はいずれも活性中心(site-1)に強く結合し、さらに、もう1つ別の結合サイト(site-2)を持つことがわかっている。L-PGDSの酵素活性には、site-1とsite-2の両方が関わっている可能性があり、これまで着目されてきたsite-1の結合情報や複合体構造情報に加えて、site-2の情報をITCおよびNMRにて取得していく。 H28年度は、以下の2つの情報を得た。1) Site-2の領域をリガンドとして生成物PGD2とその類似化合物を用いて、NMR滴下実験にて明らかにした。2) Site-2への基質安定誘導体と生成物PGD2とその類似化合物の親和性をITCによって明らかにした。 まず、NMR滴下実験に必要な基本情報として、野生型マウスL-PGDSの主鎖アミドプロトンのケミカルシフトの帰属を行い、主鎖アミドプロトンの93%の帰属を完了した。さらに、NMR滴下実験によって、site-2がL-PGDSのEF-loopおよびGH-loopの先端の領域に存在することを明らかにした。また、ITCによる生成物類似体を用いた相互作用解析によって、site-1とsite-2のそれぞれでプロスタグランジンの認識部位が異なること、また、その認識に重要な官能基部位を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度に計画していた実験に関しては、概ね完了できた。(1)NMR滴下実験によって、基質誘導体と生成物およびその類似化合物の結合部位は明らかにできた。(2)ITCを用いて、基質誘導体と生成物およびその類似化合物の親和性をそれぞれの結合部位ごとに明らかにした。ただし、現在、まだ結合部位の変異体作製は完了していない為、H29年度に持ち越した。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り、L-PGDSの結合領域のアミノ酸の変異体を作製し、ITCとNMRを測定していく。既に、site-1のアミノ酸残基の変異体は作製完了しているため、測定を行っていく。site-2のアミノ酸残基の変異体はこれから作製していく。また、L-PGDSと生成物の複合体の結晶構造解析とNMRによる構造解析を並行して進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
H28年度に行う予定であった変異体の作製が、現状まだ3割程度残っており、それに必要な遺伝子操作用試薬や器具の購入が次年度に持ち越されるため。また、ITC測定用のリガンド購入費として計上していたが、一部リガンドが在庫不足で購入できなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
H29年度に持ち越された遺伝子操作のための試薬や器具の購入に20万円程度用いる。また、ITCおよびNMRのリガンド化合物(約20mg)の購入に20万円程度用いる。
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