研究課題/領域番号 |
16K18869
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研究機関 | 兵庫医療大学 |
研究代表者 |
塚本 効司 兵庫医療大学, 薬学部, 講師 (00454794)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | DNA / 蛍光センサー / インターカレーター |
研究実績の概要 |
DNAに特異的に結合する小分子はDNAセンサーや抗がん剤として応用されているが、有用な化合物は非常に限られている。われわれはこれまでに、DNAのインターカレーターとなる疎水性蛍光色素のペリレンおよびポリアミンを利用して、蛍光off-on型の新規DNAセンサーを開発することに成功した。本研究課題では、その開発した蛍光DNAセンサーのDNA認識メカニズムを解明し、センサー分子の高性能化および更なる機能化を行うための基礎的な知見を得るとともに、センサー分子の改良を行い、実用的な蛍光DNAセンサーを開発することを目指す。 今年度は開発したDNAセンサー分子の機能性の向上やDNA認識メカニズムの解明、および新たな機能性の開拓を目的として、センサー分子の各種誘導体化およびそれらの物性および蛍光特性の評価を行った。特に、センサー分子の基本骨格であるポリアミン鎖において、アミノ基間の炭素鎖長を変化させたものや、ポリアミン鎖の末端に3-アミノプロピル基を段階的に付加してその鎖長を延長したものを種々合成し評価を行った。その結果、アミノ基を2つ、あるいは3つ有した短鎖ポリアミンの誘導体は水溶性が低く、センサー分子として利用できないことが分かった。一方、アミノ基を4つ以上有する比較的長鎖のポリアミン誘導体は水溶性が高く、水中でDNAに特異的に応答するが、ポリアミン鎖が長くなるほどDNA非共存下における蛍光が十分に消光されず、かつ蛍光回復の立ち上がりに必要なDNA量が増加する傾向が見られた。また、ポリアミン鎖のアミノ基間の炭素鎖長を2~4炭素で変化させたところ、2炭素のものは他に比べてDNAに対する蛍光応答が若干低くなることが明らかになった。 さらにペリレン上の置換基を変化させ、DNAセンサーとしての機能を維持したまま、その蛍光特性(蛍光スペクトル、蛍光量子収率等)を変化させることにも成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
DNAセンサー分子の各種誘導体化およびそれらの蛍光測定等による機能性の評価はほぼ計画通りに進行し、今後のセンサー分子の機能向上や新たな機能開発に繋がる基礎的データが得られたため。
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今後の研究の推進方策 |
今後はDNAセンサー分子の更なる機能性の向上や機能開発、DNA認識メカニズムの解明に向けて、各種誘導体の合成およびそれらの評価を行う。特に、ペリレン部位の誘導体化の検討はまだ不十分であり、また、蛍光色素としてペリレンのみにこだわらず、他の蛍光性インターカレーターの有用性も検証する必要がある。よって、当面は蛍光色素部位を中心に誘導体化を行う。その後、ポリアミン窒素上への各種置換基の導入など、多角的な誘導体の合成を検討し、有用なDNAセンサー分子の探索およびセンサー分子のDNA認識メカニズムの解明を進める。さらに、高い性能を有するセンサー分子については細胞系に適用し、細胞内でのDNAイメージング性能や細胞毒性等を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
各種誘導体合成が予想以上に効率的に進み、購入予定であった合成試薬を削減できたため。
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次年度使用額の使用計画 |
今後はより複雑な誘導体化を進める予定であり、望み通りの合成物が得られない可能性も高まることから、合成実験において計画よりもより多くの検討を加えることとし、そのための試薬等の購入に平成28年度未使用額を使用する。
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