DNAに特異的に結合する小分子はDNAを認識したり阻害したりする重要な化合物であり、DNAセンサーや抗がん剤として応用されている。当研究室ではこれまでに、DNAのインターカレーターとなる疎水性蛍光色素のペリレンおよびポリアミンを利用して、蛍光off-on型の新規DNAセンサーのプロトタイプを開発することに成功している。本研究課題では、そのセンサー分子の高性能化および更なる機能化を行うための基礎的な知見を得るとともに、センサー分子の改良を行い、実用的な蛍光DNAセンサーを開発することを目的とし、主に以下の成果を得た。 (1)さまざまな鎖長のポリアミンを用いたセンサー分子の合成法を確立し、ポリアミン鎖とそれらの物性および蛍光特性との相関を検討した。その結果、蛍光特性にある程度の差は見られるものの、ポリアミン鎖の種類にかかわらず、DNAに対して蛍光off-on型の応答を示すことが明らかになった。一方で、ポリアミン鎖のアミノ基の数およびアミノ基間のメチレン鎖長により溶媒に対する溶解性が大きく変化し、水中で利用できるものや細胞膜を透過するものなど、ポリアミン鎖の構造によって物性を調節できることが明らかになった。 (2)上記の知見から、蛍光増大率がDAPIよりも高く、DNAに対して高コントラストな蛍光応答を示す、水中で利用可能なDNAセンサーを開発することに成功した。 (3)センサー分子は二重鎖DNAに応答し、加熱、冷却による二重鎖DNAの融解、再形成に伴い、センサー分子のDNAに対する蛍光応答は可逆的に減弱、増大することを明らかにした。
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