研究課題/領域番号 |
16K18871
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
堀 由起子 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 助教 (80610683)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 脳神経疾患 / 神経科学 |
研究実績の概要 |
アミロイドβペプチド(Aβ)が脳内に蓄積することがアルツハイマー病(AD)の発症原因として考えられているため、脳内におけるAβ量制御メカニズムの解析は重要である。脳内Aβ量は産生とクリアランスの2つの機構により規定されるが、特にAβクリアランスは孤発性AD患者において破綻していることが報告されていることから、その詳細な分子機構の解明は重要と考えられる。本研究ではクリアランス機構の中でもAβ貪食(取り込み)に着目して、この機構に関わる新規遺伝子の探索を行った。すでに1stスクリーニングを終了しており、昨年度はさらにスクリーニングを進めると同時に、さらなる解析にむけ準備を進めた。 Aβ取り込みに対する個々の遺伝子の効果を評価するために、1stスクリーニングの結果に基づいて遺伝子を48種ピックアップした。また1stスクリーニング結果に基づくパスウェイ解析から、免疫応答関連因子とCa2+シグナル関連因子の関与の可能性が示唆されたことから、候補として挙がったそれぞれの関連因子についても複数種ピックアップした。解析方法としては、1stスクリーニング同様、ピックアップした個々の遺伝子をCRISPR/Cas9システムによりゲノム編集しノックアウト細胞集団を得たのち、蛍光ラベルされたAβの取り込みをFACSによって評価した。得られた結果を基に、さらなる遺伝子の絞り込みと効果のバリデーションを行っている。 さらに将来的なin vivo解析を見据え、マウス脳内におけるゲノム編集について条件検討を行った。Cas9ノックインマウス脳内にレンチウイルスによってgRNAを発現させたところ、免疫組織染色および生化学的解析によって目的遺伝子がノックアウトされていることを確認できた。得られた候補遺伝子の効果をin vivoで解析する実験系を確立できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
最終的な遺伝子の同定にはまだ至っていないが、適宜スクリーニングを進め、候補遺伝子の絞り込みを行っている。またin vivoでの効果の検証にむけて準備も進めている。今後は、遺伝子の同定を最優先にさらなる実験が必要であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
前年度の結果を踏まえた上で、本年度はスクリーニングをさらに進め最終的にAβ取り込みに関与する新規分子を同定する。またこの新規分子に対し、発現プロファイル(脳内での発現、細胞種による発現量の違い、ADモデルマウスを用いてAD pathologyとの関連など)を検討する。またin vivoにおける新規分子の効果を検討するために、昨年度確立した実験系を用いCas9ノックインマウス脳において目的遺伝子のゲノム編集を行い、Aβ量における変化を検討する。Aβ量の定量に関しては、脳を生化学的に可溶化した画分におけるAβ量測定を行うほか、申請者がすでに実験系を確立しているマイクロダイアリシス法により脳間質液を採取し脳間質液中のAβ量も定量する。さらに詳細なAβ取り込み分子メカニズムを明らかにするために、様々な変異体を作成して培養細胞に発現させ、同定した分子のどのドメイン、あるいはどの機能がAβ取り込みに関与しているのかを明らかにする。 パスウェイ解析の結果から得られた免疫応答パスウェイとCa2+シグナルパスウェイの関与に関しては、まず免疫応答を誘発する薬剤による介入実験を行い確かめる。またAβ取り込みをライブイメージングするとともに、同時にCa2+のイメージングも行うことで、細胞内Ca2+量の変動との関連を明らかにする。さらに、前述の最終的に同定されるAβ取り込み関連分子との関係性についても明らかにする。
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