本年度は以下の項目について検討をおこなった。 1. BAP31がミトコンドリアの機能に与える影響の解明 2.ヌードマウスにおけるBAP31発現抑制株の生育、及び転移能を調べる。 1.についてはオートファゴソーム内にミトコンドリアが取り込まれているかを検討したが明確なミトコンドリア像は見つけることはできなかったので、マイトファジーの誘導を調べたところ、程度は弱かったがマイトファジーは誘導されていた。細胞あたりのミトコンドリア数を調べたが、BAP31の欠損により有意なミトコンドリアの減少はみられず、細胞当たりのミトコンドリアタンパク質量の変化もみられなかった。ミトコンドリア活性は低下するがその数は減少していないことが示唆された。 2.についてはBAP31発現抑制細胞とコントロール細胞をヌードマウスの皮下に移植し、その増殖を比較したところ、BAP31発現抑制細胞で癌の増殖が移植後から促進された。しかし最終的な癌細胞の大きさについては有意な差はなかった。また移植後1週間の移植癌においてはBAP31発現抑制細胞でオートファジー誘導が促進していた。肺組織への転移を検討したところ、BAP31発現抑制細胞において肺への転移が増加している傾向が確認された。動物実験の結果からBAP31は特に虚血等のストレスが強いときに細胞死を誘導していることがことが考えられ、BAP31の欠損は強いストレスに対して細胞を適応化させることが示唆された。以上の結果より、BAP31の欠損は癌細胞の生存に有利に働くことが示唆され、BAP31は細胞の癌化を抑制する因子であることが考えられる。 現在これらの結果をまとめ、論文を投稿中である。
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