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2016 年度 実施状況報告書

プロトン輸送ATPaseを標的とする抗口腔病原細菌薬の開発

研究課題

研究課題/領域番号 16K18877
研究機関岩手医科大学

研究代表者

關谷 瑞樹  岩手医科大学, 薬学部, 助教 (70509033)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2018-03-31
キーワードう蝕 / 歯周病 / プロトン輸送 ATPase / ATP合成酵素 / F-ATPase / A-ATPase
研究実績の概要

本課題では、口腔内病原細菌の生存・増殖にプロトン輸送 ATPase が重要であることに着目し、酵素の回転触媒機構の解明と特異的な阻害化合物の探索を目的に研究を行った。本年度は、う蝕の原因菌の一つである S. mutans のプロトン輸送 ATPase を精製し、阻害化合物の探索を行った。その結果、クルクミンやピセタノールなどのポリフェノール類が阻害作用を示すことを明らかにした。続いて、酵素を阻害した化合物の S. mutans に対する抗菌作用を検討した。pH が中性の培地で各種プロトン輸送 ATPase 阻害剤は S. mutans の増殖を抑制しなかった。一方、pH が 6.3 の酸性培地では S. mutans の増殖を有意に抑制した。したがって、プロトン輸送 ATPase を阻害する化合物は S. mutans に対し、耐酸性を低下させることが示唆された。研究成果は薬学会第137年会で発表した。
また、大腸菌プロトン輸送 ATPase の酵素一分子ごとの回転を観察し、阻害する化合物を添加した際の影響を検討した。その結果、クルクミンとシトレオビリジンは触媒時間を延長させることで回転速度を低下させた。さらにコンピュータによるシミュレーションや変異体を組み合わせた解析の結果、クルクミンとシトレオビリジンはαサブユニットとβサブユニットの境界領域に作用し、βサブユニットの構造変化を妨げることが示唆された。研究成果は International Journal of Biological Macromolecules 誌に発表した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

口腔内病原微生物のプロトン輸送 ATPaseのうち、う蝕の原因菌の一つである S. mutans の F-ATPase を精製し、クルクミンやピセタノールなど数種の阻害化合物を見出した。さらに、次年度の予定であった S. mutans の耐酸性に対する化合物の評価も行った。また、酵素のキネティクスを解析し、阻害化合物の阻害メカニズムを明らかにした。
一方、歯周病原因菌の一つである P. gingivalis の A-ATPase については遺伝子のクローニングには成功したが、精製には至っていない。今後、他のプロトン輸送 ATPaseとのキメラ酵素を用いることを含め、発現・精製条件を検討する。
一部予定より遅れているが、予定より進んでいる点もあり、全体として順調に研究は進んでいると考えられる。

今後の研究の推進方策

前年度に S. mutans のプロトン輸送 ATPase を阻害したポリフェノール化合物について、その類縁体と阻害作用を比較することにより構造活性相関を検討し、さらに強力な阻害化合物を見出す。類縁体は市販のものに加え、東北大学・大学院薬学研究科の岩渕好治教授、岩手医科大学薬学部の河野富一教授から合成化合物の提供を受ける。阻害化合物は S. mutans の低 pH 条件下での増殖率や生存率への影響を評価する。
P. gingivalis のプロトン輸送ATPase については引き続き発現方法や精製方法を検討する。大腸菌プロトン輸送 ATPase の一部のサブユニットを口腔内病原微生物のものと置換したキメラ酵素として発現させることも検討する。
S. mutans の F1 部分、及び P. gingivalis の A1 部分について酵素 1 分子ごとに回転を観察する。各サブユニットの回転における機能を明らかにする。S. mutans F1 の α、β、γ サブユニット、P. gingivalis A1の A、B、D サブユニットについて、大腸菌 F1 の各サブユニットと対応させ、重要と思われるアミノ酸残基に変異を導入し、変異体の回転を解析する。上記の研究を通じて特異的阻害剤の開発に役立つ特徴を理解し、薬剤の標的となり得る細菌特異的なキネティクスと構造部位を明らかにする。また、阻害作用を見出した化合物を加えた際の F1、A1の回転を観察し、キネティクスを検討する。さらに、化合物に対する耐性変異体の解析により阻害部位を明らかにする。口腔内病原細菌特異的なキネティクス・部位に作用する阻害剤は選択毒性の高いう蝕・歯周病の予防・治療薬の候補化合物になると考えられる。

次年度使用額が生じた理由

プロトン輸送 ATPase 阻害剤のスクリーニングに用いるため購入予定であった一部の化合物が生産中止となり、今年度の購入を見送った。その結果、小額ながら次年度に繰り越した。次年度初頭に他のメーカーより購入予定である。

次年度使用額の使用計画

プロトン輸送ATPase阻害剤のスクリーニング用試薬に充てる。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Role of α/β interface in F1 ATPase rotational catalysis probed by inhibitors and mutation2017

    • 著者名/発表者名
      Sekiya, M., Sakamoto, Y., Futai, M., Nakanishi-Matsui, M
    • 雑誌名

      Int. J. Biol. Macromol.

      巻: 99 ページ: 615-621

    • DOI

      10.1016/j.ijbiomac.2017.02.089.

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [学会発表] プロトン輸送ATPaseを標的とした抗う蝕化合物の探索2017

    • 著者名/発表者名
      泉澤信太郎、關谷瑞樹、櫛桁安生、芳賀雅人、下山佑、木村重信、佐々木由香、岩本昌子、中西(松井)真弓
    • 学会等名
      日本薬学会第137年会
    • 発表場所
      仙台
    • 年月日
      2017-03-26
  • [学会発表] クルクミン類による ATP 合成酵素阻害作用2016

    • 著者名/発表者名
      關谷瑞樹、山野辺春香、千葉瑛子、佐藤桃恵、河野富一、大橋暁香、小川智、山越博幸、岩渕俊治、二井將光、中西(松井)真弓
    • 学会等名
      第89回日本生化学会大会
    • 発表場所
      仙台
    • 年月日
      2016-09-26

URL: 

公開日: 2018-01-16  

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