研究課題
痛風患者ではアルツハイマー病を発症するリスクが減少することが報告されているが、血中尿酸がアルツハイマー病の病態を改善するメカニズムの詳細は不明である。本研究では、高尿酸血症がアルツハイマー病の病理学的変化を抑制するかどうか、また血中尿酸濃度の上昇が脳内の尿酸動態にどのような影響を与えるか、マウスを用いて明らかにすることを目的とする。平成29年度は前年度に完了できなかったマウスの樹立を継続して行い、尿酸分解酵素ウリカーゼノックアウトマウス(Uoxノックアウトマウス)とアルツハイマー病モデルマウス(APPノックインマウス)の複合変異ホモマウスを維持・繁殖できる体制が整った。また、免疫組織化学的にアミロイドβ、アストロサイト、ミクログリア等の集積を定量的に解析する手法を確立した。抗アミロイドβ抗体を用いた免疫染色により血中尿酸値の大小によってアミロイド斑形成に差が見られるか予備的に検討したところ、高齢マウスでは大きな差はなく、経時的に各種抗体染色の結果を比較検討することとした。脳内尿酸濃度の測定系の構築に関しては、側脳室から脳脊髄液を採取して尿酸濃度をHPLCで測定することができるかどうかの検討を進めたが、現状では血液の混入なく脳脊髄液を採取することができていない。今年度採取方法の改良を進める予定である。
2: おおむね順調に進展している
複合変異マウスの系統を樹立することができ解析に必要な個体を一定数揃える環境が整えられたことに加え、比較検討を行う手法を確立できたため。
アミロイドβの沈着が始まる初期、中期、後期において高尿酸-アルツハイマー複合マウス、低尿酸-アルツハイマー複合マウスの脳切片を作製し、アミロイドβ、アストロサイトおよびミクログリアの集積を比較しすることで血中尿酸値による病理学的影響を明らかにする。脳内尿酸濃度の解析にあたっては、側脳室からの採取方法が確立でき次第、尿酸トランスポーターノックアウトマウスを用いて脳内尿酸輸送機構における尿酸トランスポーターの寄与を検討する。
次年度使用額がわずかに生じたが、今年度複合変異マウスを用いた免疫組織学的解析に必要な各種消耗品の購入にあてる。
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Nat Commun.
巻: 8 ページ: 15800
10.1038/ncomms15800.