本研究課題では、次世代型アルツハイマー病モデルマウスと血中尿酸値を上昇させたマウスを組み合わせ、血中尿酸値の上昇がアルツハイマー病の病態を抑制するメカニズムを明らかにすることを目的とした。最終年度は、前年度に樹立した次世代型アルツハイマー病モデルマウス(APPKI)-尿酸分解酵素ウリカーゼノックアウトマウス(UoxKO)の複合変異ホモマウス(APPKI-UoxKO)とAppKIマウスが病理学的、行動学的に違いを示すかどうか検討を行った。16週齢および32週齢のマウス由来の脳切片を用いてアミロイドβの免疫染色を行ったところ、APPKI-UoxKOマウスにおいて大脳皮質領域におけるアミロイド斑の蓄積は抑制されず、逆に増強されていることが明らかとなった。その理由としては、尿酸値の上昇が十分でない可能性や尿酸がアミロイド斑の蓄積自体には影響しない可能性が考えられる。行動学的解析としては、29~31週齢の雄マウスを用いてY迷路試験を行った。過去の報告では6ヶ月齢のアルツハイマー病モデルマウスにおいて有意な自発的交替行動率の低下が見られていたが、我々の実験条件では野生型マウスに比べて交替行動率の低下傾向はあるものの個体差が大きく、今回は尿酸値の変動がアルツハイマー病モデルマウスの認知機能の低下に影響するかどうか明らかにすることができなかった。今後は、尿酸代謝系をよりヒトに近づけたモデルマウスを用いて認知機能の評価を行うとともに、アミロイド斑蓄積以降のイベントに対する尿酸の影響についても検討していく予定である。
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