本研究では、毒ヘビ血液由来毒素阻害タンパク質群(SSPs)の標的毒素分子認識機構および阻害機構を明らかにすることを目的としている。本研究期間内(平成28-29年度)の研究成果を以下に示す。 1、ハブ神経毒および内在性阻害剤(SSP)の調整:ハブの粗毒または血液中から天然のtriflinとSSPを精製した。また、大腸菌発現系を用いて組み換え体triflinとSSPの合成を試み、両者ともに希釈法を用いたリフォールディングより調製する方法を確立した。 2、神経毒素triflinの標的イオンチャネルを同定:パッチクランプ法による生理学実験からL型Ca2+チャネルの発現量が多い平滑筋細胞A7r5およびL型Ca2+チャネルを過剰発現させたHEK293細胞を用いてtriflinがL型Ca2+チャネルの電位依存性チャネル活性を阻害することを明らかにした。さらに、そのtriflinのチャネル阻害活性をSSPが抑制することを証明した。 3、SSPを利用したコブラ科由来の神経毒素の単離:クサリヘビ科の血液中から見出したSSPが他の毒ヘビ由来の毒素と相互作用するのかをSSPを固定化したアフィニティクロマトを作成して調べた。そのSSPカラムにインドコブラ、タイコブラの粗毒から特異的に神経毒素が結合し、単離できることを証明した。 4:ファージディスプレイ法によるペプチドライブラリーの作成と変異体解析:T7ファージを用いて毒素認識に関与するSSPのN末端領域をランダマイズしたライブラリーを作成し、毒素と特異的に結合するファージの単離を行った。引き続き、毒素との結合親和性とその阻害能評価を行う予定である。 5:阻害活性ペプチドのデザインと合成:5種類のSSPsのアライメントよりそれぞれ標的毒素との相互作用領域を考慮したペプチドを合成した。その合成ペプチドの阻害評価を行ったが、天然SSPと比較して阻害活性は低かった。
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