研究課題/領域番号 |
16K18883
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研究機関 | 独立行政法人国立病院機構(呉医療センター臨床研究部) |
研究代表者 |
岡田 麻美 独立行政法人国立病院機構(呉医療センター臨床研究部), その他部局等, 研究員(移行) (30517280)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | シナプス新生 / うつ病 / アストロサイト / thrombospondin-1 / 電気けいれん療法 |
研究実績の概要 |
難治性うつ病の新規標的分子としてシナプス新生を誘導するアストロサイト由来分泌因子トロンボスポンジン-1(thrombospondin-1: TSP-1)に着目し、TSP-1がどのようにうつ病の病態や電気けいれん療法による抗うつ作用に寄与するかを明らかにする目的で以下の検討を進めた。 1)うつ病患者の電気けいれん療法前後の末梢血・脳脊髄液の収集を、研究協力者の協力を得て進め、目標数に概ね達成してきた。また、うつ病患者死後脳の提供を受ける準備も整った。 これら臨床サンプル中のTSP-1測定に関わる基礎検討として、末梢血に関しては完了している。一方で最近、末梢血液中から中枢由来のエキソソームを抽出し、中枢由来エキソソーム中のタンパクを測定することで、中枢での変化を末梢でとらえることが可能であることを示唆する報告がなされた。TSP-1はアストロサイト由来の因子であることから、末梢血中の変化だけでなく、そこから抽出した中枢エキソソーム分画中の変化を検討することが今後重要になると考えられた。そこで、末梢血中の総エキソソームを抽出したところ、アストロサイトマーカーであるglutamate aspartate transporter(GLAST)が検出されることを確認した。つまり、末梢血中にアストロサイト由来エキソソームが存在することが示唆された。現在、このアストロサイト由来エキソソームを抽出する手技の確立に関する検討も並行して行っている。 2)TSP-1の関与を動物の行動学的指標を用いて評価するための予備検討を進めた。ストレス負荷によるうつ病様の行動変化、抗うつ薬を投与した際の効果発現を評価できる条件を決めることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1)サンプルの収集自体は順調であった。末梢血中のTSP-1測定に関しては条件を決めることができた。しかし、末梢血中からアストロサイト由来エキソソームを抽出するための条件検討に時間を要してしまった。 2)動物の行動評価系の条件を決めるのに時間を要したため、当該年度計画していた行動学的指標を用いたTSP-1の関与の検討に進めなかった。
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今後の研究の推進方策 |
臨床サンプルの収集が順調に進められたので、重点を置いて研究を進める。脳脊髄液、死後脳組織について、TSP-1を測定するための条件検討を完了させ、実際にサンプル中のTSP-1を測定して比較検討を行う。また、血液に関しては、末梢血そのものだけでなく、中枢由来エキソソームでの測定も行えるよう、検討を進める。 in vivo実験に関しては、行動学的指標を用いたTSP-1の関与の検討を進める。行動学的評価実験に伴って得られる脳組織などからmRNAやタンパクを抽出し、TSP-1の変化を追う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度は計画していたよりも少ない予算で進行したため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度に必要な物品の購入費にあてる。
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