研究課題/領域番号 |
16K18889
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
齋藤 僚 立命館大学, 薬学部, 助教 (30732846)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 小胞体ストレス / 神経突起伸長 / MAPK / PI3K/Akt |
研究実績の概要 |
本研究は、精神神経疾患における環境的要因として"小胞体ストレス"に着目し、同ストレスと神経細胞の成熟異常との関連を解析している。これまでの研究により、慢性的な小胞体ストレス負荷がヒト神経芽細胞腫SH-SY5Yにおけるall-trans retinoic acid(ATRA)誘導性の神経突起伸長を抑制することを見出している。2016年度においては、小胞体ストレスによる神経突起伸長抑制機序の解明を目指し、Western blot法等を用いて細胞内シグナル伝達の解析を実施した。その結果、ATRA刺激によってErk、JNK、p38-MAPKおよびAktのリン酸化が促進し、ATRA誘導性のp38-MAPKおよびAktの活性化は、低濃度Tunicamycin(Tm:小胞体ストレス誘導試薬)による前処理によって抑制されることが明らかになった。また同様に、低濃度Tmにより、神経突起伸長に関連するectodermal-neural cortex 1(ENC1)遺伝子のmRNA量が減少することを見出した。続いて、低濃度Tm処理によるATRA誘導性のp38-MAPKおよびAktの活性抑制と、ENC1-mRNAの減少との関連を検討するため、各種細胞内シグナル阻害剤を用いて、ENC1-mRNAの減少機序に関与するシグナル経路を解析した結果、p38-MAPK阻害剤であるPD169316による前処理によってのみENC1-mRNAの発現が有意に減少することが示され、また、MEK阻害剤であるU0126による前処理によってもENC1-mRNAの発現が抑制される傾向にあることが明らかになった。本年度の研究により、低濃度Tm処理による慢性的な小胞体ストレス負荷がATRA誘導性のp38-MAPKの活性化を抑制し、ENC1-mRNAの発現を低下させることで神経突起の伸長を抑制する可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
小胞体ストレス負荷によって直接的もしくは間接的に抑制されるシグナル伝達経路を見出した他、神経突起伸長に関連する遺伝子(ENC1)の発現変動との関連を示せたため、本研究は順調に進展していると考える。 当該研究期間中に次年度の解析条件を検討する予定であったが、解析条件の確定には至らなかったため、進捗状況の区分を「おおむね順調に進展している」とした。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、小胞体ストレス負荷によってリン酸化が抑制されていたp38-MAPKおよびAktを薬理学的手法を用いて再活性化し、神経突起伸長における効果を検証する。また、小胞体ストレスの緩和による神経突起伸長に対する効果も併せて検討する予定である。一方、mRNAの発現が認められたENC1の生理機能に関しては、生化学的手法を用いた究明に注力する予定である。
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