研究課題
平成29年度の研究計画では、エンドセリンETB受容体の拮抗薬による頭部外傷後のBlood-brain barrier(BBB)破綻の抑制に関与する機序を解明することを目的とした。前年度の研究では、BBBの破綻を促す因子である血管透過性亢進因子に注目し、ETB受容体拮抗薬BQ788が頭部外傷後に増加する血管透過性亢進因子の発現を抑制することを見出した。本年度は、血管修復因子としてBBB破綻に対する修復作用が示唆されている「アンジオポエチン」に注目した。まず、流体衝撃による頭部外傷を与えたマウスの脳内におけるアンジオポエチン-1(ANG-1)の発現変化を確認したところ、傷害の7日後から10日後でANG-1の発現増加が認められた。ANG-1の発現増加と関連して、ANG-1の受容体であるTie-2の活性化も確認された。蛍光免疫組織染色により、脳内でのANG-1やTie-2の発現細胞を確認したところ、頭部外傷後、ANG-1の発現はアストロサイトや血管内皮細胞で観察され、Tie-2の発現は血管内皮細胞で多く観察された。BQ788をマウスの側脳室内に投与した場合、頭部外傷後のANG-1の発現増加が促進され、ANG-1の増加と相関してTie-2の活性化も確認された。また、ANG-1をマウスの側脳室内に投与すると、頭部外傷後のBBB破綻は抑制されていた。これらの結果より、ETB受容体拮抗薬によるANG-1の増加がBBB破綻の抑制に関わっていることが推察される。
2: おおむね順調に進展している
前年度までの研究により、ETB受容体拮抗薬であるBQ788がBBB破綻を抑制するための投与量や投与スケジュールが確立できており、また、今回注目したアンジオポエチンに関しても、BBB破綻に対する抑制作用などが示されている論文を前もって熟読することができていたので、研究をスムーズに計画し、進行することができた。実験手技に関しても前年度と同様、研究スタッフ全員が迅速に習得することができたので、分担して効率良く作業を行うことができた。
ETB受容体拮抗薬によるBBB破綻の抑制機序の一端としてANG-1の関連が示唆されたので、ETB受容体とANG-1の関連をより詳細に検討するために、頭部外傷後のマウス脳においてANG-1やTie-2の発現が確認されたアストロサイトや血管内皮細胞に注目し、それぞれの培養細胞を用いて研究を進めていく。また、今後は頭部外傷後の炎症性傷害にも注目し、好中球の脳内への浸潤やサイトカインおよびケモカインの発現増加に対するETB受容体拮抗薬の効果を確認していく予定である。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件)
Journal of neurotrauma
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
10.1089/neu.2017.5421.
Yakugaku Zasshi.
巻: 137 ページ: 1241-1246
10.1248/yakushi.17-00134