研究課題
臨床的に抗がん剤が効きにくい腫瘍である腎臓癌を研究対象とし、外科手術が適用不可の症例、あるいは外科手術後の腎臓癌に対する薬物治療の可能性を探索することを目的とする。候補薬剤として、内因性抗がん物質である15-deoxy-Δ12,14-prostaglandin J2 (15d-PGJ2)、近年開発が進んでいる分子標的薬としての抗体などを用い、腎臓癌に対する作用およびそのメカニズムを解析することで、難治癌である腎臓癌の新規治療法の開発を目指す。本年度は、前年度に引き続き15d-PGJ2の腎臓癌細胞遊走阻害作用について、そのメカニズムを検討した。15d-PGJ2との関与が示唆されているユビキチン-プロテアソーム系やオートファジー系の関与について、阻害剤を用いた検討を行った結果、これらの阻害剤を15d-PGJ2と併用しても腎臓癌細胞遊走阻害作用に影響はみられなかった。また、細胞遊走評価の方法として創傷治癒アッセイに加えて新たに、三次元的な細胞の動きを解析するためのボイデンチャンバー法を採用して検討を行った。検討の結果、創傷治癒アッセイの場合と同様に、15d-PGJ2を腎臓癌細胞に適用すると、細胞死を誘導しない低濃度において、腎臓癌細胞の遊走を阻害することが確認できた。腎臓癌の原因遺伝子の一つであるvon Hippel-Lindau(VHL)遺伝子と15d-PGJ2の関与について、VHL遺伝子の発現が異なる細胞種を用いて、15d-PGJ2ならびに各種薬剤を併用して適用し、15d-PGJ2の抗腫瘍作用にVHL遺伝子が関与するかどうか検討した。検討の結果、VHL遺伝子の有無によらずに、15d-PGJ2は各種抗がん剤の抗腫瘍活性を増強することが明らかとなった。
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