本研究課題の目的は、漢方生薬「麻黄」に使用されるマオウ属植物の優良品種選抜及び品種改良を行う事により、利用価値の高い新品種を育成すること、及びマオウ属植物の品質評価法を開発することである。本研究で得られた成果は以下の通りである。
(1)新品種の育成では、E. sinicaを雌株に使用した交雑法による品種改良を行った。その結果、E. sinica×E. likiangensisでは発芽1年目の平均総アルカロイド含量が0.31%、2年目では0.57%であった。その中で最も高い総アルカロイド含量は1.8%であった。発芽後2年目であることを考慮すると極めて高い含量であると考えられる。また、E. sinica×E. chilensisでは全ての株において1年目、2年目ともにアルカロイドが検出されなかった。すなわち、アルカロイドを含まない新品種の育成に成功した。 (2)品質評価法の開発では、ウイグル医学などで古くから使用されているアルカロイドを含有しないE. przewalskiiに着目し、総タンニン含量をFolin-Ciocalteu法によって分析した結果、14.7%であった。同様にE. sinicaの総タンニン含量を分析すると8.3%であり、E. przewalskiiは多量のタンニンを含有している事が明らかになった。また、E. sinica 63個体を用いて総アルカロイド含量と総タンニン含量の相関関係を調査した結果、相関係数r=0.85の正の相関が認められた。以上の結果より、総タンニン含量の測定はアルカロイドの有無に影響しない麻黄の新たな品質評価法として有用であると考えられる。 (1)で育成した新品種に関して、植物形態学的特徴の調査や、含有成分を対象とした品質評価法として総アルカロイド含量、総タンニン含量、メタボローム解析等を継続している。
|