研究実績の概要 |
本研究では、RANKL(receptor activator of NF-kB ligand)依存的な破骨細胞の分化を阻害する天然有機化合物を海洋由来資源から探索した。本研究を実施した2年間の研究期間において、17個の新規化合物を単離し、3報の論文として発表した((a) J. Nat. Prod. 79, 1922-1928 (2016)、(b) J. Nat. Prod. 80, 90-95 (2017)、(c) Heterocycles in press)。3報の論文はいずれも海綿から得られた活性物質について報告したが、(a)の論文では、ジテルペンであるceylonamidesが破骨細胞の分化を阻害することを示した。また、(b)の論文では、ジテルペンであるceylonin Aが破骨細胞の分化は阻害せずに、細胞融合を阻害することを明らかにした。また、(c)の論文では、最終年度である平成29年度に発見した新規化合物aaptic acidとその類縁体の活性について報告した。一方、海洋由来Aspergillus属真菌から得られたプレニル化インドールアルカロイドについて活性を調べたところ、(-)-6-epi-notoamide Tが強い阻害活性を示すことが分かった(Bioorg. Med. Chem. Lett. 27, 4975-4978 (2017))。破骨細胞の分化に対する強い阻害活性がインドールアルカロイドに認められた報告は初めてであり、新たな作用機構で分化を阻害していることが期待される。 本研究では、破骨細胞の分化を阻害する新規化合物を発見するとともに、破骨細胞の分化は阻害せずに、細胞融合を阻害する化合物を見出すことができた。細胞融合を阻害する化合物が骨粗しょう症の医薬リードとして有望であるかどうかを調べることで、今後、さらに研究を展開したい。
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