研究課題/領域番号 |
16K18900
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
大城 太一 北里大学, 薬学部, 助教 (30458765)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 天然物 / 脂質代謝 / 阻害剤 |
研究実績の概要 |
生体内での中性脂質(コレステリルエステル (CE) とトリグリセリド (TG))の蓄積は、脂肪肝や肥満を惹起することから、その予防・治療法が求められている。本研究では、1) 中性脂質CEとTGを生成させる細胞評価系を用いて、微生物資源を対象にその生成阻害剤を探索すること、2) 既に申請者の研究グループが発見してきたCE生成に関与するステロールO-アシル転移酵素2 (SOAT2) 阻害剤とTG生成に関与するやジアシルグリセロールアシル転移酵素2 (DGAT2) 阻害剤が脂肪肝や肥満発症動物モデルにおいて有効であるかどうかを検証すること、3) 項目1) で発見した新しい微生物由来の機能分子の構造や標的分子の解明を目的として進めている。 まず1)中性脂質生成阻害剤の探索については、我々の研究室で供給される約2000株の微生物培養液サンプルを評価した結果、細胞内のCE生成を特異的に阻害する新規化物2成分と既知化合物であったが細胞内のTG生成を特異的に阻害する化合物2種4成分を発見した。現在、精力的にスクリーニングを行ない、精製候補株として細胞内のCE生成を阻害する5株、TG生成を阻害する2株、CEとTGの両方の生成を阻害する1株があり、活性物質の単離精製、構造決定を進めている。 つぎに2)動物実験については、SOAT2選択的阻害剤ピリピロペンA誘導体に焦点をあて、研究を進めている。これまで、脂質低下作用と抗動脈硬化作用を確認したが、本年度は脂肪肝(NAFLD)や脂肪肝炎(NASH)に対する影響を評価している。 最後に3)標的分子の解明に関する研究については、既知化合物であったが1)で発見したTG生成阻害化合物(クロモマイシン類)について検討を進め、細胞種によってTG生成阻害活性が大きく変わることを明らかにした。中でも、ヒトバーキットリンパ腫由来Raji細胞のTG生成を強力に阻害した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
微生物資源を対象に細胞レベルで中性脂質生成阻害剤をスクリーニングした結果、細胞内のCE生成を特異的に阻害する新規化合物を2成分と既知化合物であったが細胞内のTG生成を特異的に阻害する化合物2種4成分を発見し、その作用メカニズム解析も進めている。ピリピロペンA誘導体の動物実験に関しては、脂肪肝/脂肪肝炎発症モデルマウスの選定を行ない、現在、評価を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
今後も引き続き、細胞レベルで中性脂質生成阻害剤を探索し、その構造や標的分子の解明を目指す。さらに、ピリピロペン誘導体の動物実験を精力的に進める。 1) 微生物資源からの中性脂質生成阻害剤の探索研究:スクリーニングサンプルは、申請者の研究グループが分離、培養した微生物資源ライブラリーを用いる(年間、2,000から3,000サンプルが供給される)。すでに、申請者が確立した細胞評価系を用いて、[14C]オレイン酸から生合成させた細胞内のCEとTGの変動を定量し、その生成阻害剤を探索する。また、SOATやDGATアイソザイムに焦点をあてた target-based assayシステムを用いた探索研究も進め、SOAT2選択的阻害やDGAT2選択的阻害すような機能分子を探索する。 2) モデル動物を用いた薬理試験:動物実験では、ピリピロペン誘導体に焦点をあて、脂肪肝/脂肪肝炎発症モデル動物を用いて、その薬理効果を評価する 3) 作用メカニズムの解析:項目1)で得られた阻害剤について、その作用メカニズムを明らかにし、標的分子の特定を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、微生物資源からの中性脂質生成阻害化合物の単離精製の過程において、既存のガラス器具、カラムなどで代用できたことから、その分支出額が抑えられたため。
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次年度使用額の使用計画 |
すでに、中性脂質阻害活性を示す精製候補培養液は選択されているため、次年度はその培養に用いる培地、培養器具の購入費として使用する。
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