昨年度は血糖値上昇抑制作用を示すビスデスモシド型トリテルペン配糖体を見出した。そこで最終年度は血清トリグリセリドの上昇抑制作用を示すサポニンの探索を行った。ユリ科Scilla peruvianaの鱗茎から単離した12種のトリテルペン配糖体について、細胞毒性がないことを確認し膵リパーゼ阻害活性を評価した。その結果、scillascilloside Dが強い阻害活性を示した。化合物のメチル化や糖の結合により活性が変化することを見出した。さらにscillascilloside Dはマウス血清トリグリセリドの上昇抑制作用を示した。平成30年度に計画した実験項目は、サポニンが3T3-L1細胞に及ぼす影響を評価することであった。そこでヒト肝がんHepG2細胞を用いて、ppar-gammaアゴニスト活性成分の脂肪滴蓄積に対する影響を評価した。HepG2細胞にオレイン酸を添加し脂肪滴の蓄積をoil red o 染色で確認した。そこへ活性成分を投与したところ、脂肪滴がわずかに減少したが有意な差は認められなかった。 生活習慣の乱れによる内臓脂肪蓄積は,肥満,糖尿病等を惹起させ,メタボリックシンドロームにつながる。本研究の目的は、天然物由来のステロイド配糖体やトリテルペン配糖体などのサポニン系化合物について、メタボリックシンドロームの治療薬としての可能性を、マウスを用いて評価し検討することである。3年間の研究の結果、ユリ科の園芸植物に含まれるトリテルペン配糖体のリパーゼ阻害活性およびマウスの血清トリグリセリド上昇抑制作用を明らかにするとともに、構造活性相関を見出した。別のユリ科園芸植物からは糖尿病モデルマウスの血糖値上昇を抑制するトリテルペン配糖体を見出した。今後はサポニンのメカニズムの解明に向けて、マウスの血清を用いた活性評価を行う。
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