研究実績の概要 |
平均寿命の延伸に伴い、生活習慣病の罹患者数が増加している。DNA損傷の蓄積は、がんなどの生活習慣病の発症に関わっており、DNA損傷を抑制する物質は生活習慣病の予防に有効であると考えられる。このDNA損傷と生活習慣病の関係に着目し、DNA損傷の優れた検出方法の1つであるコメットアッセイ法を用いて、DNA損傷抑制作用を有する天然資源ならびに活性成分を探索し、生活習慣病予防に有効なシーズを供給することを目的として研究を行なった。 最終年度は、前年度に引き続き採集した天然資源の抽出エキスの成分検索を行った。Chrysanthemum morifolium(菊)花部からは、2個の新規ポリアセチレン配糖体を含む5個の化合物を単離、構造決定した。Teucrium chamaedrys(ウォールジャーマンダー)の酢酸エチル可溶画分からは、1個の新規ジテルペノイドを単離、構造決定した。また新たな天然資源として、海洋生物についても成分検索を実施した。Pseudoceratina属の海綿動物からは、2個の新規ブロモチロシンアルカロイドを単離、構造決定した(Mar. Drugs, 2018, 16, 463.)。Hyrtios属の海綿動物からは、1個の新規β-カルボリンアルカロイドを単離、構造決定した (Tetrahedron Lett. 2018, 59, 4500-4502.)。その他、2種の渦鞭毛藻、3種の海綿動物から4個の新規化合物を単離した。 本研究では、天然資源を対象にコメットアッセイ法によるスクリーニングを実施し、DNA損傷抑制作用を有する天然資源を見出した。また10種の天然資源の成分検索を行い、13個の新規化合物を含む43個の化合物を単離、構造決定した。このうち12個の化合物についてUVによるDNA損傷の抑制活性を評価したところ、4個の化合物が活性を示すことが明らかになった。
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