研究課題/領域番号 |
16K18905
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研究機関 | 長崎国際大学 |
研究代表者 |
宇都 拓洋 長崎国際大学, 薬学部, 講師 (90469396)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 白斑治療 / メラニン合成促進物質 / 作用機序解析 / 標的分子 |
研究実績の概要 |
1) マウスメラノーマB16-F1細胞及びヒトメラノーマHMV-II細胞において、代表的な甘草フラボノイドであるリクイリチンとそのアグリコンであるリクイリチゲニンが、メラニン合成誘導活性を持つことを見出した。これらのメラニン合成促進能は、Tyr、TRP-1、TRP-2のタンパク質発現上昇に起因することが示唆され、各種阻害剤を用いた解析の結果、p38およびPKAがMITFタンパク発現を制御していることが明らかとなった。標的分子同定のために、抗リクイリチン特異的モノクローナル抗体を1次抗体としたウエスタンブロッティングを行ったところ、35-38kDa付近にリクイリチン結合タンパク質が検出された。(論文投稿準備中) 2) より強力なメラニン合成活性を示す薬用植物エキスおよび活性物質を発掘するために、B16-F1細胞を用いて85種の薬用植物エキススクリーニングを行った。その結果、強いメラニン合成活性を示す3種の薬用植物エキスが見つかり、そのうち1種の植物エキスから活性本体を同定した。(特許出願に向けて大学本部へ発明届提出済み)さらにその作用機序を解析したところ、PKAを介したCREBおよびp38の活性化により、MITFのタンパク発現を誘導することでTyr、TRP-1、TRP-2のタンパク質発現を惹起していることが示唆された。 3)B16-F1細胞を用いて約200種の天然化合物ライブラリーのメラニン合成活性スクリーニングを行ったところ、5種の天然化合物に強い活性を見出した。現在、構造活性相関および作用機序解析を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
パイロットサンプルである甘草フラボノイドのメラニン合成誘導活性とその作用機序解析に関する研究はほぼ完了している。また、メラニン合成活性を示す薬用植物エキスおよび天然化合物の探索を目的としたスクリーニングの結果、当初予定していたよりも強い活性を示すエキスおよび天然化合物が多く見つかった。そのうち一部はすでに特許出願に向けて学内手続を完了しており、おおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
メラニン保有マウスやより生体に近いヒト皮膚3次元モデルにおいて、スクリーニングの結果得られた候補エキスおよび候補化合物のメラニン合成促進作用を検証する。薬用植物エキススクリーニングの結果、3種の薬用植物エキスが見つかり、そのうち2種のエキスの活性本体は同定していないため、これらの解析を進める。同定された活性物質の作用機序解析を進めることに加えて、我々が得意としている抗天然物特異的モノクローナル抗体を利用した活性成分の細胞・組織内局在解析や標的分子同定を行い、白斑治療の標的分子に関する新しい知見を導き出す。
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次年度使用額が生じた理由 |
この次年度使用額は、パイロットサンプルである甘草フラボノイドを用いたヒト皮膚3次元モデルおよびメラニン保有へアレスマウスでのメラニン合成活性評価の物品費である。当初、パイロットサンプルを用いてこれらシステムでの活性評価を行う予定であったが、薬用植物エキスおよび天然化合物スクリーニングの結果、パイロットサンプルより高い活性をもつ活性物質が複数見つかった。そのため、これらの活性物質を用いたヒト皮膚3次元モデルおよびメラニン保有へアレスマウスでのメラニン合成活性の確認を行うことを優先した。
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次年度使用額の使用計画 |
活性物質を用いたヒト皮膚3次元モデルおよびメラニン保有へアレスマウスでのメラニン合成活性の確認を平成29年度中に完了させる。さらに作用機序解析および標的分子同定解析を行う。
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