尋常性白斑は、皮膚の基底層に分布するメラノサイトが何らかの原因で機能障害に陥りメラニンを供給できなくなることに起因する後天性疾患である。治療抵抗性かつ再発頻度も高い難治療性の色素異常症であるため、特に露出部位に生じた場合は患者のQOLを著しく低下させる。本研究は、より臨床にマッチした白斑治療薬創出を目標として、生薬エキス及び天然化合物ライブラリーからメラニン合成促進物質を探索し、活性成分の作用機序を解析した。 1)甘草フラボノイドであるリクイリチン(LQ)及びリクイリチゲニン(LQG)がメラノーマ細胞においてメラニン合成促進活性を示すことを見出し、その作用機序を明らかにした。また、本研究室で作成したLQ及びLQGに対するモノクローナル抗体を用いて、LQやLQGの細胞内挙動、標的分子を解析した。 2)辛夷エキスがメラノーマ細胞において高いメラニン合成促進活性を示すことを見出した。成分解析の結果、酢酸エチル画分から7種のリグナン類を単離同定し、中でも(+)-マグノリンの活性が高いことを見出した。さらに、ヒト皮膚3次元モデルにおいても酢酸エチル画分及び(+)-マグノリンはメラニン合成促進活性を示すことを確認した。 3)辛夷エキスと同様に丁子エキスも高いメラニン合成促進活性を示すことを見出した。成分解析及び活性評価の結果、酢酸エチル画分に含まれる精油成分やトリテルペン類に活性を見出し、それらが協調してメラニン合成を誘導している可能性を明らかにした。 4)天然化合物のスクリーニングにより、強いメラニン合成促進活性を示す化合物を探索した。そのうちマリアアザミの種子の主要成分であるシリビニンの作用機序を明らかにした。 5)追加で実施した植物エキスのスクリーニングの結果、数種の植物の非薬用部位に高いメラニン合成促進活性を見出した。非薬用部位の有効活用に結び付く知見であり、今後の展開が期待される。
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