研究課題
グアニン四重鎖 (G4) は遺伝子発現調節を中心とした様々な機能を担う、核酸の高次構造である。本研究では、G4 を介した内在性SOX2の発現をモニタリングできるがん幹細胞 (CSC) の樹立、ならびに、SOX2 G4と結合することで、がん幹細胞に対し細胞増殖抑制活性を有するG4リガンドの創製を目的としている。本年度は、SOX2/GFPノックインマウスを用いて、発がん二段階実験を行った。まず、SOX2/GFPノックインマウスの皮膚に対し、DMBAを塗布し、イニシエーションを行った。その後、発がんプロモーターとしてokadaic acidあるいはTPA (12-O-Tetradecanoylphorbol 13-acetate) を週二回処理した。その結果、処理群では、過形成・パピローマが認められたが、扁平上皮がんまでの進行は認められなかった。摘出したパピローマでは免疫染色やフローサイトメトリーにより、期待通りSOX2の発現の亢進が認められた。しかし、得られた細胞を継代培養することはできなかった。今後、マトリゲルを用いた三次元培養を含む幹細胞の培養条件を中心に、これらの細胞の培養条件を検討していく。また、G4リガンドのスクリーニングを行い、SOX2 G4に結合し、SOX2の発現を抑制する化合物の探索も行う。さらに、SOX2を増加させる因子や、SOX2増加に伴い発現が変化する遺伝子群の調査も行い、がんの転移能亢進、薬剤耐性獲得のメカニズム解明に関する検討についても行っていく予定である。
2: おおむね順調に進展している
研究計画通り、SOX2/GFPノックインマウスの発がん二段階実験を行う事が出来た。また、SOX2の発現を評価する、免疫染色、フローサイトメトリー、リアルタイムPCR、ウエスタンブロッティング等の系の確立を行う事が出来た。以上より、次年度計画への基盤を予定通り行う事が出来ると考えられるため。
研究計画通り、SOX2/GFPノックインマウスから得られる細胞に対しG4リガンドを処理し、SOX2発現の抑制効果について検討する。同時にin vitroにおいてもSOX2 G4の安定化についても検討する。有望化合物については、in vivoでの抗腫瘍活性の検討も行う予定である。
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