研究課題/領域番号 |
16K18910
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
水口 貴章 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 助教 (30732557)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | EGFレセプター / 環状ペプチド / 細胞内薬物送達分子 / ドラッグデリバリー / 蛍光イメージング / フローサイトメトリー / 抗がん剤 / 中分子 |
研究実績の概要 |
申請者は、多くのがん細胞で過剰発現しているヒト上皮成長因子(EGF)レセプターの細胞外領域を分子標的とした新規作用機序の抗がん薬創製を目指している。本課題では、申請者らが見出した二量体化アーム由来の二量体化阻害環状ペプチド1を基に、より高活性な阻害剤に改変することを目的とする。環状ペプチド1のN末端に適度な極性をもつアミノ酸を一つ付加することで、EGFレセプターの二量体化阻害活性が向上することが明らかとなった。一方、フェニルアラニンなどの疎水性アミノ酸を付加した場合には、二量体化阻害活性が大きく減少する結果が得られた。これらの情報は阻害活性の向上を目指した環状ペプチド1の構造活性相関研究に重要である。 また、これまでの研究にて見出した環状ペプチド1や改変ペプチドがEGFレセプター陽性がん細胞内に移行する現象を利用して、新規の細胞内薬物送達分子に応用することにも試みた。遺伝子工学的手法を用いて、EGFレセプターの発現量を抑えた細胞を作成し、フルオレセイン標識した環状ペプチド1あるいは改変ペプチドを作用させ、フローサイトメトリーを用いた定量解析を実施したところ、細胞内に移行するペプチド量がいずれも減少する結果が得られた。さらに、この改変ペプチドに、細胞内にてアポトーシスを誘発するペプチドを連結した分子をいくつか化学合成した。これらの分子のうち、両ペプチドの連結部位に細胞内環境にて環状ペプチドとアポトーシス誘導ペプチドが切り離されるように設計したものに、EGFレセプター陽性がん細胞の増殖を抑える効果が認められた。この抗がん活性分子について、更なる検証が必要であるが、新たな抗がん薬リードに発展させられることが期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
環状ペプチド1のN末端に関する構造活性相関研究より、今後、EGF受容体の二量体化および自己リン酸化に対するより高活性な阻害剤を創出するために必要な情報が得られた。また、環状ペプチド1および改変ペプチドを基に、新規の細胞内薬物送達分子に発展し得る有用な化合物を創製することができた。これらの研究成果は、本研究課題を達成するために、非常に有意義な結果だと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に見出したEGFレセプター陽性がん細胞内に移行する環状ぺプチドにアポトーシス誘導ペプチドを連結した分子に関する更なる機能評価を実施する。本分子によるカスパーゼ誘導活性の発現の有無や細胞膜に対する障害性を細胞毒性の指標の一つとして更なる調査を進める。EGFレセプターの発現量の異なるがん細胞種において、細胞増殖抑制効果の差がみられるかなども調査する。抗がん活性の向上を期待した改変化合物の合成にも着手する予定である。 また、EGFレセプター二量体化阻害活性環状ペプチド1をもとに、EGF レセプター(ErbB1)のホモ二量体化および構造的相同性の高い類縁レセプター群(ErbB2-4)とのヘテロ二量体化を阻害する新規化合物の創製研究も実施する予定である。
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