研究課題/領域番号 |
16K18911
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
喜多村 徳昭 岐阜大学, 工学部, 助教 (10503659)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 核酸医薬 / ポスト修飾 / 効率的合成 |
研究実績の概要 |
siRNAやmicroRNA(miRNA)といった機能性短鎖RNAは次世代医薬品として期待されている。しかし、体内酵素による分解、標的組織移行性や細胞膜透過性の低さなどの問題により、十分な治療効果が得られないのが現状である。研究代表者らはこれまでに、siRNA(相補的な配列を含む標的mRNAの遺伝子発現を抑制する20塩基程度の二本鎖RNA)の3’末端2塩基突出部分を化学修飾すると、分解酵素に対する耐性が向上ことを明らかとしている。また、細胞膜透過性の改善に繋がる手法を見出している。さらに、種々の機能性核酸や構築基盤の簡便合成、穏和な条件下での核酸やペプチドの簡便ポスト修飾法を開発している。そこで本研究では、これまでの知見を活かし、標的組織内に効率的に取り込まれ、組織の環境に応答して機能を発揮する高機能性短鎖RNAの開発を目指した。 先行研究で見出していた配位子不要で室温で効率的に進行するCopper-catalyzed azide-alkyne cycloaddition(CuAAC)反応がジスルフィド結合を有するペプチドやタンパク質にも適用可能であることを見出し、実際に生体ペプチドのポスト修飾を達成した。本修飾に有用な末端アルキンを有する活性エステルやマレイミドの開発にも成功した。さらに、本研究で目的としている高機能性短鎖RNAを開発する上で鍵となる末端アルキン含有核酸を核酸自動合成機を用いて核酸オリゴマーに導入する際に必要となる亜リン酸化合物の効率的合成法を開発した。 以上、本研究課題を推進する上で有用な反応を開発するともに、鍵となる化合物の効率的な合成法を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で目的としている高機能性短鎖RNAを開発する上で有用な反応を開発するともに、鍵となる化合物の効率的な合成法を確立することができた。 CuAAC反応は、末端アルキンとアジドが1価の銅触媒存在下で容易に反応して安定なトリアゾール環を形成する事から様々な分子のポスト修飾法として汎用されている。しかし、CuAAC反応で一般的に用いられる条件では、タンパク質の高次構造に重要な役割を担っているジスルフィド結合の開裂が併発する。そのため、ジスルフィド結合を有するペプチドやタンパク質に適用する場合には従来高価な配位子を共存させる必要があった。今回、ジスルフィド結合を有するペプチドやタンパク質にも適用可能であるCuAAC反応を見出した。本手法を用いることにより、RNAに簡便に抗体などの機能性タンパク質を修飾することができる。 核酸自動合成機を用いた固相ホスホロアミダイト法により、リボースを糖部に有する核酸アナログを導入した核酸オリゴマーを合成するにあたり、2位水酸基を適切な官能基で保護する必要がある。従来法の多くは、3位水酸基との選択性が乏しく、また副生する3位水酸基保護体との分離が容易ではなかった。今回、原料や合成工程を工夫することにより、効率的に目的の亜リン酸化合物を合成する手法を開発した。 さらに、本研究過程において、環境に応答する新規ツールを見出した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題を推進する上で有用な手法を開発することができた。しかし、当初予定していたRNA修飾用分子の安定性が乏しく、目的の高機能性短鎖RNAの合成が困難なことから、改良が必要であることが判明した。今回新たに見出した環境応答ツールを応用することで本問題が解決できると考えられることから、詳細な検討を加えた上で目的とする高機能性短鎖RNAの開発を目指す。さらに開発したRNAに関して、遺伝子発現抑制能を評価するとともに、修飾構造が遺伝子発現に与える影響の解明と修飾分子の構造最適化を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題で目的とする化合物の合成において、効率的な手法を見出すことができ、当初予定していた物品の購入が不要となったため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
合成した化合物を精製するための機器ならびに開発した修飾RNAの評価のための実験に必要な試薬や研究協力者に係る謝金に充てる。また、研究成果を海外で開催される国際学会で発表する予定であり、海外出張の費用として使用する。
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