siRNAやmicroRNAといった機能性短鎖RNAは次世代医薬品として期待されている。しかし、体内酵素による分解、標的組織移行性や細胞膜透過性の低さなどの問題により、十分な治療効果が得られないのが現状である。研究代表者は先行研究で、siRNAやmicroRNAの3'末端2塩基突出部位(ダングリングエンド)の化学修飾とそれらが及ぼす影響について種々の有益な知見を得ている。加えて、これらの機能性短鎖RNAの医薬創製を目指す上で有用な手法(種々の機能性核酸や構築基盤の簡便合成法、穏和な条件下での核酸やペプチドの簡便ポスト修飾法)を開発している。そこで本研究では、標的組織内に効率的に取り込まれ、組織の環境に応答して機能を発揮する高機能性短鎖RNAの開発を目指した。 ダングリングエンドに導入する分子の合成を検討する過程で、フラノイドグリカール(dDR)の1位や3位に適切な置換基を導入することによりdDRの反応性を制御できることを見出し、dDR誘導体が特定の環境下で切断されるリンカー分子として有用であることを実証した。また、ダングリングエンドの構造最適化を検討する中で、2位水酸基をベンジル化した塩基部欠損ヌクレオシド(RHOBn)をsiRNAのダングリングエンドに導入すると、血清中での安定性が大幅に向上することを見出した。加えて、1-デオキシ-1-エチニル-β-D-リボフラノース(RE)の核酸自動合成用誘導体の簡便合成法を開発した。REを有するRNAは、研究代表者らが確立したリガンドフリーCuAAC反応条件下で種々のアジド化合物と迅速に反応した。 以上、目的とする高機能性短鎖RNAを構築する上で有用な様々な手法を開発した。これらは核酸医薬創製のための有用なツールになると期待される。
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