研究課題/領域番号 |
16K18914
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研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
田口 晃弘 東京薬科大学, 薬学部, 助教 (40707311)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ジスルフィド結合 / 創薬化学 / ペプチド合成化学 / 固相合成 / 有機化学 / 固相担持試薬 |
研究実績の概要 |
新規SH基選択的ジスルフィド結合形成試薬の創製に向けた候補化合物の獲得を目指し、平成28年度はニコチン酸誘導体のアルコキシチオならびにエステル構造に着目した誘導化を実施した。まず、アルコキシチオ構造の誘導においては、低級アルコールおよびフェノール誘導体などを導入した。一方でメチルエステル構造の誘導では、当該構造を除去し簡略化させた。また、この構造においても水酸基を有する化合物を導入し、合計16種の誘導体合成を行った。次に、モデルペプチドとしてアミノ酸9残基の還元型オキシトシンを用い、これら誘導体の酸化(ジスルフィド形成)能を評価した。その結果、メトキシチオ構造を有する誘導体において、HPLC収率92%にて効率的に酸化体を生成すること、分子間よりも分子内反応が優先的に進行することも確認した。ペプチド化学、タンパク質化学での応用に向け、無保護官能基(アミン、カルボン酸、水酸基、チオール)を有するペプチドに対する反応性を精査した。これら官能基が存在しても問題なくジスルフィド結合が構築可能であることが示された。また側鎖がt-ブチルおよびアセトアミドメチル基で保護されたシステインや、酸化、修飾され易いアミノ酸とは全く反応しないこともわかった。従って、本誘導体によるジスルフィド結合は、無保護SH基選択的であることが示唆された。本誘導体の安定性に関しても検証を行った。不活性ガスの置換等特別な処理することなく、室温にて少なくとも6ヶ月以上安定に保存可能であることが、NMR測定およびHPLC分析にて示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成28年度では、合成誘導体の数が当初計画より少なかったが、実施計画のほとんどを遂行することができた。そのため、平成29年度実施予定であるジスルフィド結合を含む生理活性ペプチドの合成に向け、準備することもできた。また、同様に29年度実施予定の固相試薬創製についても計画を繰り上げ、初期的な検討に着手した。更に本研究課題で得られた成果に関しては、特許出願を行った。従って、以上の事から本研究課題の進捗状況について、当初の計画以上に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度についても新規誘導体合成およびそのジスルフィド形成能を継続的に評価する。一方で、ジスルフィド結合を含む生理活性ペプチドの合成研究により、新規ジスルフィド結合形成試薬を用いた効率的な当該結合の構築法を提供する。平成28年度得られた知見を基に、オキシトシン以外の生理活性ジスルフィドペプチドの合成を検討し、より複雑な分子においてもジスルフィド結合が構築可能であることを実証する。また、分子内に複数の当該結合を有する生理活性ペプチドの合成を実施する。本検討では、システイン残基側鎖における直交型保護基を導入により位置選択的かつ効率的にジスルフィド結合を構築する。分析HPLCにて標品との重ね打ちやCDスペクトル測定によるペプチドの二次構造の比較などにより、合成ペプチドのジスルフィド結合が位置選択的に構築されていることを確認する。 また、固相担持型ジスルフィド結合形成試薬の創製も着手する。本誘導体を固相化することで、簡単なろ過操作のみで高純度のジスルフィドペプチドが獲得可能な、利便性の高い試薬を創製する。本実施計画では、固相担体(樹脂)の検討、固相担体と誘導体間のリンカーの検討を実施する予定である。得られた固相試薬に関しても還元型ペプチドを用い、そのジスルフィド結合形成能を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由としては、平成28年度において合成予定であった誘導体数が若干少なかったため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
このため、新規誘導体の合成とジスルフィド結合能などの機能評価を実施するための経費に当てる計画である。
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