研究課題
平成30年度は、より有用な固相担持型ジスルフィド形成試薬を創製すべく、新たに導入するNpys誘導体の検討を行った。まず、システイン残基に対するNpys誘導体の反応性を液相にて確認した。これまでに合成した誘導体で検討した結果、良好な反応性を示した誘導体を幾つか見出すことができた。続いて、Chemmatrix樹脂を用いた誘導体の固相化を図ったが低収率であった。今後、固相試薬を効率的に得るために反応条件を最適化する必要がある。また、還元型ペプチドを用いたモデル反応を実施し、新規固相試薬の有用性を明らかにする予定である。一方で、他の固相担体や固相担体とNpys誘導体間のリンカーの検討を行うことで固相試薬の創製を進める予定である。ペプチド化学に応用可能な新規ジスルフィド形成試薬の創製を目指し、研究を行い、研究期間全体を通して以下の成果を得た。1)Npys-ORの効率的合成法確立に成功し、Npys-OMe誘導体を基盤に誘導化を行った。2)9残基の還元型オキシトシン用いたモデル実験では、複数の誘導体の中でもNpys-OMeが高収率で酸化体を生成すること、また分子内ジスルフィド結合形成が優先的に進行することがわかった。また、より構造の複雑な心房性ナトリウム利尿ペプチド(28残基)の合成においても、本誘導体は効率的に機能することが示された。3)ジスルフィド結合を2組有するコノトキシン(12残基)の合成では、本誘導体と既存の酸化法を段階的に用いることで、位置選択的なジスルフィド結合の構築が可能となった。4)反応溶液をろ過するだけで高純度の酸化型ペプチドが獲得できる固相試薬の創製にも成功した。以上のように、本研究では有用なジスルフィド形成試薬の創製および本試薬を用いた効率的なジスルフィドペプチド合成法の構築に至り、これら成果はペプチド化学に貢献できると考えられる。
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