研究実績の概要 |
本研究課題では、高い親電子性を有するゆえ生体内に侵入した際にはタンパク質のチオール基に容易に共有結合し(親電子修飾)、その機能および細胞内シグナルを破綻させることで健康影響が懸念される環境中親電子物質のリスク評価と、高い求核性を有した活性イオウ分子によるその不活化という新奇生体防御機構の立証を目指している。我々の身近に存在する8つの環境中親電子物質メチル水銀、カドミウム、鉛、アクリルアミド、クロトンアルデヒド、1,2-ナフトキノン(1,2-NQ)、1,4-ナフトキノン(1,4-NQ)および1,4-ベンゾキノンをマウス由来初代培養肝細胞に曝露し、MTT法により細胞生存率を解析することで各環境中親電子物質の濃度依存的な毒性発現を解析し、その有害性の閾値を網羅的に明らかとした。そこで、活性イオウ分子が環境中親電子物質を捕獲して不活性化(無毒化)するかを検証した。活性イオウ分子のうちポリスルフィドのモデル化合物であるNa2S4を初代培養肝細胞の培養液中へ添加したところ、1,2-NQ、1,4-NQ、カドミウム、鉛の曝露により誘導される細胞死が顕著に阻害された。また1,2-NQまたは1,4-NQを初代培養肝細胞へ曝露し、タンパク質の親電子修飾量を抗1,2-NQおよび抗1,4-NQ抗体を用いたウェスタンブロッティングにより確認したところ、Na2S4添加によって内在タンパク質の親電子修飾量が著しく減少していた。このことから外来的に添加した活性イオウ分子により環境中親電子物質の毒性が軽減されることが示された。
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