国内外で分離されたヘリコバクター・シネディ42株について、疫学解析を行った。16S rRNA塩基配列、GyrAアミノ酸配列、Multilocus sequence typing(MLST)法で利用する7つの遺伝子(23S rRNA、ppa、aspA、aroE、atpA、tktA、cdtB)の塩基配列、およびCRISPR領域の配列を明らかにした。GyrAアミノ酸配列はヘリコバクター属の系統解析において有用であると報告されているが、同一菌種における菌株間では塩基配列に差がみられなかった。 CRISPR領域は繰り返し配列であるリピート配列と、外来遺伝子由来のスペーサー配列から構成されており、本菌種はゲノム中にCRISPRを2つ保有している。CRISPR 1のスペーサー数は平均32個、CRISPR 2は6個であり、多様なスペーサーを獲得していることが明らかとなった。その中で、1つのスペーサーは、ヘリコバクター・シネディPAGU611株が保有するプラスミド由来であることが分かった。 16S rRNA塩基配列による系統解析、MLST法、CRISPRのスペーサー分布解析では、分離株42株は3つの解析法すべてにおいて、7つのグループに分類された。CRISPRのスペーサー分布解析では、他の解析法では識別できなかった菌株間の相違を分別可能であり、国内外における本菌種の分布をより詳細に把握できることが明らかとなった。本研究成果は学術論文ならびに学会にて発表した。
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