ヘリコバクター・シネディはゲノム内にCRISPR-Cas領域を保持している。この領域には外来遺伝子の一部を獲得して自身のゲノム中に組み込んだスペーサー部位が存在し、獲得免疫機構として機能している。外来遺伝子由来のスペーサー分布は疫学解析に応用が可能であると考えられたため、本研究では菌株間の比較解析を行った。国内外分離株について検討したところ、スペーサーの欠損や獲得を明らかにすることで、他の疫学手法では区別できなかった菌株同士を識別することが可能となった。また、菌株の分離された年代とスペーサーの変化から、同一施設内での感染拡大の様子を推察することでき、菌株の変遷を辿ることが可能であった。
|