研究課題/領域番号 |
16K18924
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研究機関 | 芝浦工業大学 |
研究代表者 |
廣田 佳久 芝浦工業大学, システム理工学部, 助教 (70724277)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ビタミンK / UBIAD1 / 側鎖切断酵素 / 遺伝子改変動物 / 腸 |
研究実績の概要 |
ヒトが主に食事から摂取するビタミンKはphylloquinone(PK)であるが、組織中に存在するビタミンKの大部分はmenaquinone-4(MK-4)である。これまでに我々は、PKを摂取後、小腸で側鎖が切断され側鎖を持たないmenadione(MD)となり、各組織中でUbiA prenyltransferase domain containing protein 1(UBIAD1)によってMK-4へ合成されることを科学的に証明した。しかし、PKからMDへの側鎖切断反応は全く明らかでない。そこで、本研究では食事から摂取したビタミンKがMK-4へ合成されるビタミンKの生体内代謝機構を統一的に理解するため、in vitroやin vivo解析を行いビタミンK側鎖切断酵素の同定を目指している。 本年度は、側鎖切断反応を受けないビタミンK誘導体の探索を行った。ビタミンK誘導体の合成は芝浦工業大学の須原教授に合成していただき、in vitroおよびin vivoの実験系を用いて評価を行った。新たに合成したビタミンK誘導体の中で、PKの2位と3位の側鎖が飽和したビタミンK誘導体では、PKと同様にGGCX活性を示しSXRとは反応しなかった。この誘導体を培養細胞に添加した結果、MK-4への変換反応は認められず、マウスに投与した結果組織中のMK-4濃度の上昇は認められなかった。さらに、腸からの吸収経路である門脈およびリンパ管をカニュレーションしたラットでは、PKを投与した際にリンパ液中にMDが確認されたが、ビタミンK誘導体ではMDが全く検出されなかった。以上のことから、合成したビタミンK誘導体は側鎖切断を受けないビタミンK誘導体であることが分かった。またビタミンK側鎖切断反応様式では、2位と3位の側鎖部位が不飽和化していることが重要だということがわかった。次年度は、側鎖切断酵素の探索に注力する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度中に、側鎖切断反応を受けないビタミンK誘導体を同定することに成功した。小腸の初代培養系の樹立に時間がかかっているが、同時にオミクスの手法を用いて、側鎖切断酵素の遺伝子およびタンパク質の網羅的解析を行う目処がついたため。また、関連する内容で論文を発表したため。
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今後の研究の推進方策 |
オミクスの手法を用いて、側鎖切断酵素の遺伝子およびタンパク質の網羅的解析を行い側鎖切断酵素の同定を試みる。また、本年度明らかになったビタミンK側鎖切断反応様式から、類似の反応を行う酵素が見い出されているので、予想される酵素に関して遺伝子改変を行うことで、酵素の同定を目指す。いずれの方法から見い出された酵素に関して、ゲノム編集技術であるCRISPR/Cas9システムを用いて目的酵素をノックアウトしたマウスを作出し、ビタミンK合成を評価することによって最終的に側鎖切断酵素を同定できると考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予算相当の額を使用しているため、問題はない。
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次年度使用額の使用計画 |
使用計画に大きな変更はない。
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