研究課題/領域番号 |
16K18925
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研究機関 | 京都薬科大学 |
研究代表者 |
渡部 匡史 京都薬科大学, 薬学部, 助教 (60634326)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス / ヘルペスウイルス / 遺伝子発現制御 / ウイルス性前開始複合体 |
研究実績の概要 |
初年度は,まずKSHV ORF34がウイルス性前開始複合体の構成因子として機能すること,さらにはその分子機構の一端を明らかにし,その成果を報告した(Nishimura M., Watanabe T., et al. Sci. Rep. 2017). 上記にくわえて,KSHV ORF23ならびにORF66欠損ウイルスの性状解析について研究を展開した.ORF23ならびにORF66欠損BACクローンを構築し,これらBACクローンを安定的に保持する定常発現細胞株,すなわち,ORF23ならびにORF66欠損ウイルス産生細胞を樹立した.これらの細胞からのウイルス産生量を評価したところ,ORF23欠損ウイルス産生細胞での顕著な低下はみとめられなかった.一方で,ORF66欠損ウイルス産生細胞では,野生型ウイルス産生細胞と比して明らかなウイルス産生量の低下をみとめた.以上のことから,KSHV ORF66がKSHV産生により重要な役割を果たしていることが示唆された. ORF66欠損ウイルスの解析をすすめたところ,野生型ウイルスならびにORF66欠損ウイルス産生細胞において,細胞内ウイルスゲノム複製の差異をみとめなかった.さらに,RT-qPCRアレイによるKSHV遺伝子発現解析から,ORF66欠損ウイルス産生細胞では野生型ウイルス産生細胞に比して, K8.1遺伝子をはじめとしたKSHV後期遺伝子群の発現が低下していることを確認した.これらの結果はゲノム複製以降の段階,後期遺伝子発現にORF66が寄与していることを示すものである. すなわち,KSHV ORF66がウイルス性前開始複合体構成因子として機能していることを強く示唆する結果を得るに至っている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度研究課題である“KSHV ORF23ならびにORF66欠損ウイルスの性状解析”では,ORF66欠損ウイルスにのみ顕著な表現型,すなわちウイルス産生量の低下を観察したため,ORF66欠損ウイルス性状解析に集中することとした.そのため,ORF23欠損ウイルスに関しては解析を中断している.一方では,ORF66欠損ウイルスの性状解析については,前述のとおりの進捗が得られている. また,次年度計画・目標である“vPIC相互作用宿主性因子の同定および機能解析”に必要不可欠な研究材料であるエピトープタグ付加KSHV BACクローンの構築が現在難航している.当初予定していたエピトープタグ(S-tag)のKSHV BACクローンへの挿入が確認できていないためである.これについては再度BACクローン構築を試みるとともに,他のエピトープタグ(FLAG-tagまたはHA-tag)の挿入についても同時に取り組んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
前述したとおり,KSHV ORF66欠損ウイルスの性状解析から,ORF66がウイルス産生に必須であり,かつKSHV後期遺伝子発現に重要であることを示唆する知見を得ている.また,アミノ酸配列をもとにしたin silico構造相同性解析より,前開始複合体構成因子である基本転写開始因子TFIIB(好熱古細菌Pyrococcus furiosus由来)の一部ドメインと,ORF66が類似相同構造を有することが推測された.これらの知見から,タンパク質構造をもとに,各種ORF66変異体を構築し,ウイルス複製における機能や他のウイルス性前開始複合体構成因子との相互作用を評価する.これによりORF66のウイルス性前開始複合体における役割,さらには分子機構の解明につなげる. 次年度計画・目標である“ウイルス性前開始複合体と相互作用宿主性因子の同定および機能解析”については,早急にタグ付加組換えKSHV BACクローンの構築に終えるとともに,当初の予定通りウイルス性前開始複合体の分離・精製ならびに結合タンパク質のMALDI-TOF/MS解析に取り組んでいく.あわせてCHIP-SeqによるKSHVゲノム上のウイルス性前開始複合体結合領域の同定も試みる予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた,初年度後期からのウイルス性前開始複合体の分離・精製が,研究スケジュール遅延により遂行できなかったため,使用を予定していた研究試薬の購入に至らなかった.
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次年度使用額の使用計画 |
タンパク質複合体分離・精製のための精製ビーズやCHIP用抗体などの研究試薬を中心とする物品費として次年度に使用する.
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