研究課題/領域番号 |
16K18928
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
林原 絵美子 国立感染症研究所, 細菌第二部, 主任研究官 (20349822)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | Helicobacter cinaedi / 病原因子 |
研究実績の概要 |
Helicobacter cinaedi感染症は近年,特に日本で報告が増えている.その一方で感染経路や病原性など不明な点が多い.H. cinaediの病原因子としてCytolethal distending toxin(CDT)が明らかになっているが,それ以外の病原因子についてはほとんど報告がないことから,本研究ではH. cinaediによる感染病態に寄与する新規病原因子を明らかにすることを目的としている. 今年度は前年度に作製した病原因子の候補因子のノックアウト株を用いて,in vitroでの感染実験を行い,病原性に寄与する可能性のある因子のスクリーニングを行った.その結果,U937への細胞障害活性を指標とした系を用いた場合に,複数回の感染実験において細胞障害活性が野生株に比べて低下するノックアウト株が存在した.このノックアウト株は大腸菌など多様な病原性細菌にコードされているSerine Protease autotransporterと相同性のあるタンパク質であった.さらに複数菌株のRNA-Seq解析において,本タンパク質が十分な発現をしていることを確認した.現在はこのタンパク質の機能解析を目的として,活性部位であることが想定される領域の組換えタンパク質精製・活性の測定を行っている. 一方,本研究開始当初,ノックアウト株作製に用いる予定であった院内感染由来クローンは,ノックアウト株を作れなかったため,異なるクローンを用いてノックアウト株作製に用いたが,コドン最適化等の工夫を行った薬剤耐性遺伝子カセットを作製することにより,ノックアウト株の作製を行うことができるようになった.院内感染由来クローンに特有に存在する病原因子もあることから,今後,そのノックアウト株を作製し,病原性への寄与を検討する予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
H. cinaediの病原因子の絞り込み後,精製タンパク質を用いた活性の評価に関して,タンパク質の可溶化のための条件検討に手間取った.現在は可溶性画分への発現が行えるようになり,活性の評価を行っている.
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今後の研究の推進方策 |
現在,病原因子の抗体を作製中であり,この抗体を用い,病原因子のlocarizationや発現量等を菌体および感染細胞の染色等により明らかにする.また,ノックアウト株を用いて,病原因子の病原性評価のための細胞感染実験,動物実験を行っていく.さらに,Serine Protease autotransporterのアミノ酸配列を菌株間で比較した結果,TransporterをコードするC末端領域の配列は菌株間で相同性が高い一方,活性タンパク質をコードするN末端領域はクローン毎に配列が大きく異なっていた.そこで,各クローンごとにタンパク質を精製し,活性を評価する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度に実施を予定していた実験の一部を次年度に行うため、その際に必要となる試薬、消耗品,実験動物の購入費用に充てる.
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