研究課題/領域番号 |
16K18929
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
古堅 彩子 北海道大学, 薬学研究院, 助教 (90767261)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 胎盤 / 抗てんかん薬 / トランスポータ / 葉酸 |
研究実績の概要 |
本研究は、胎盤における抗てんかん薬の輸送に寄与するトランスポータを明らかにするとともに、臨床上考え得る問題点に関して多角的に検討することにより、抗てんかん薬による胎児リスクの低減に繋がる情報を得ることを目的とする。本研究では、「①抗てんかん薬輸送におけるトランスポータの寄与」「②多剤併用が及ぼす影響」「③葉酸輸送に及ぼす影響」「④各妊娠段階における輸送量」に関して検討する。本年度は胎盤由来の細胞株 (BeWo、JEG-3) を使用して、①~③の項目について検討を進めた。 ① 各抗てんかん薬 (バルプロ酸、ガバペンチン、ラモトリギン、トピラマート、レベチラセタム) の輸送特性について評価を行った。バルプロ酸、ラモトリギン、およびガバペンチンの細胞への取り込みは高濃度において飽和し、輸送担体が関与することが示唆された。バルプロ酸の輸送に関しては、各種モノカルボン酸による阻害が確認されたものの、monocarboxylate transporter 1 (MCT1) は関与しないことが示された。ガバペンチンの輸送については、L-type amino acid transporter 1 (LAT1) が主要に寄与すること、生体基質 (分岐鎖アミノ酸、甲状腺ホルモン) により輸送が阻害されることを明らかにした。一方、トピラマートおよびレベチラセタムの細胞内への取り込みに関しては、トランスポータの寄与は小さいことが示唆された。 ② 胎児へのリスクが明らかであるバルプロ酸の細胞内への輸送活性に対して、各種抗てんかん薬の併用は影響を及ぼさないことが示された。 ③ 妊娠時に重要な栄養素である葉酸について評価した。多くの抗てんかん薬は、胎盤細胞における葉酸輸送活性に対して直接的な影響を示さなかった。一方、長期的に曝露することにより、一部の抗てんかん薬は葉酸輸送量を変動させることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、「①抗てんかん薬輸送におけるトランスポータの寄与」「②多剤併用が及ぼす影響」「③葉酸輸送に及ぼす影響」について検討を進め、次年度の計画に繋げる結果を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度においては、前年度の検討を引き続き行うとともに、雌性妊娠ラットおよびヒト胎盤由来トロホブラスト細胞を使用して、「④各妊娠段階における輸送量」に関する検討に着手する。妊娠日齢の異なる雌性ラットに抗てんかん薬を経口投与した後、母体血中濃度、胎盤蓄積量、胎児血中濃度を定量し、妊娠の進行に伴い輸送量に変化があるか否か検討する。また、ヒト胎盤組織より絨毛細胞の単離・培養を行うことで、サイトトロホブラスト細胞からシンシチオトロホブラスト細胞への分化に伴う輸送活性の変化について検討を行う。
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