直接作用型経口抗凝固薬は、治験データに基づき血液凝固能検査が不要として市販されたが、大出血による死亡例の発生により安全性への懸念が高まり、安全性・有効性の指標としての血中薬物濃度の活用が模索されている。そこで、本研究では実臨床における患者背景を踏まえた上で直接作用型経口抗凝固薬の血中薬物濃度を指標とした個別投与設計法を構築することを目的とした。 実臨床における使用実態を明らかにするために、昨年度からさらに症例数を増やし、直接作用型経口抗凝固薬服用患者の背景や有効性、出血などの有害事象の発現を後方視的に調査した。添付文書においては、腎機能低下又はP-糖蛋白阻害薬併用患者では一段階減量することが推奨されているが、両因子を保有している患者ではさらなる減量を考慮する必要性があると推察された。 上記のような腎機能障害患者におけるP-糖蛋白を介した薬物相互作用を明らかにするためには臨床試験が必要とされるが、腎機能障害患者を対象とした臨床試験は通常行われない。そこで、腎機能患者におけるバーチャル臨床試験を実施するために、直接作用型経口抗凝固薬の生理学的薬物速度論(PBPK)モデルを構築した。このPBPKモデルで予測された直接作用型経口抗凝固薬の血中薬物濃度推移は、過去に報告された臨床試験における血中濃度推移と一致していた。本モデルを用いることで腎機能障害患者のような特殊集団における個別投与設計法の構築が可能となると考える。
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