新規抗てんかん薬であるラモトリギンおよびレベチラセタムのクリアランスは妊娠中に上昇し、妊娠経過に伴うけいれん発作抑制効果の減弱に関与する可能性が示されている。本研究では、妊娠によるクリアランス上昇を考慮した投与設計を行う基盤を構築することを目的とした。前年度までに、ラモトリギンとUGT1A4による代謝物であるラモトリギン2-Nグルクロニドおよびレベチラセタムの定量系を開発した。平成29年度は、ラモトリギンに着目し、患者64名の血中濃度から薬物動態パラメーターの算出を行った。 母集団薬物動態解析の結果、ラモトリギンクリアランスの予測式として、バルプロ酸の併用によって0.5倍に減少し、カルバマゼピンおよびフェニトインの併用によって2.5倍に上昇するモデル式が構築された。ラモトリギンの主要な体外排泄経路は、ラモトリギン2-Nグルクロニドの尿中排泄である。ラモトリギンクリアランスとラモトリギン/ラモトリギン2-Nグルクロニド血中濃度比は、良好な相関を示し、ラモトリギン/ラモトリギン2-Nグルクロニド血中濃度比を組み込んだクリアランスのモデル式を構築することができた。UGT1A4の発現量は妊娠の経過に伴い増加することが示唆されている。ラモトリギンは、肝固有クリアランス律速型薬物であり、ラモトリギン/ラモトリギン2-Nグルクロニド血中濃度比は、UGT1A4の発現量を反映すると考えられる。従って、ラモトリギン/ラモトリギン2-Nグルクロニド血中濃度比を用いたクリアランス予測は、妊婦の経過を考慮したラモトリギン投与の個別適正化につながることが期待できる。
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