研究課題
前年度に同定した生体内化合物によるOATP1B1の持続的な阻害作用様式を検討した。この化合物は、HEK293/OATP1B1細胞への[3H]E3Sの取り込みを、濃度依存的かつPre-incubation時間依存的に阻害した。Direct InhibitionにおけるIC50は、14.7 μMであり、既知のOATP1B1阻害作用を有する尿毒症物質の一つであるIndoxyl Sulfate (4.8 mM)よりも、100倍以上強力にOATP1B1を阻害した。3時間まではPre-incubation時間依存的に阻害が強まったが、3時間以降は阻害が強まる傾向はなかった。Cyclosporin Aは、OATP1B1をPre-incubation時間依存的に阻害するが、その阻害活性は30分以上のpre-incubationでは強まらなかったことから、Cyclosporin Aよりは遅いPre-incubation時間依存性を有していた。Direct Inhibitionでは、HEK293/OATP1B1での[3H]E3Sの取り込みに対するKmおよびVmaxが増加し、Long-lasting Inhibitionでは、Kmが増加しVmaxは変化しなかった。Pre-incubationによる阻害は、3時間で回復したことから、Long-lastingな阻害は可逆的であった。OATP1B1細胞膜表面ビオチン化の結果、本化合物はOATP1B1の細胞膜上での発現量および総発現量を変化させなかった。HAタグで標識したOATP1B1の免疫染色においても、6-OH indoleはOATP1B1の細胞膜上への発現局在は変化させなかった。OATP1B1の阻害機構には、OATP1B1の細胞膜局在変化は関与しないことが示唆された。本化合物は、肝細胞に発現する薬物代謝酵素P450で代謝されて生成することから、肝細胞内および肝細胞近傍では全身循環血よりも高濃度で存在する可能性があり、肝細胞の内部からOATP1B1を阻害することも考えられ、慢性腎障害時におけるOATP1B1の阻害作用に関して更なる検討が必要である。
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http://www.p.kanazawa-u.ac.jp/~bunyaku/