研究課題/領域番号 |
16K18937
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
高娃 阿栄 京都大学, 医学研究科, 特定助教 (50643805)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ペプチド / ドラックデリバリー / 経口製剤 |
研究実績の概要 |
EGFR2R-lyticハイブリッドペプチドは細胞殺傷を担うペプチド配列(Lytic)と上皮増殖因子受容体 (EGFR)に結合する標的ペプチド配列から構成され、EGFR高発現癌細胞選択的に殺細胞効果を示し、従来の薬剤耐性癌細胞皮下移植担がんマウスモデルに対しても高い抗腫瘍効果を示し、新規抗がん剤としての有用性が確認された。さらに、生体適応性の高分子材料と組み合わせた徐放性注射製剤ではペプチドの血中動態が改善され、抗腫瘍効果が増強されることが示された。EGFR2R-lyticハイブリッドペプチドの臨床応用に向け、投与形態について頻回注射による患者への負担を軽減するためには経口製剤化が望ましい。しかし、ペプチド性の薬物は消化管粘膜透過性が低く、消化酵素などによって分解されやすいため、薬理効果を十分発揮できないという問題がる。本研究では、従来からの経粘膜吸収促進剤である胆汁酸を用い、ハイブリッドペプチドの消化管吸収性を改善させ、臨床応用可能な経口投与製剤として創製することを目的としている。H28年度に得られた研究実績を以下に示す。EGFR2R-lyticハイブリッドペプチドと胆汁酸との静電的相互作用を利用した製剤検討の結果、ペプチドと胆汁酸の最適な混合比が1:2であることが分かった。次に、ヒト結腸癌由来培養細胞株Caco-2を腸管モデル細胞として用いた膜透過試験の結果、経口製剤ではペプチド単体より透過量が多く、小腸内のpH条件ではペプチドが経口製剤から時間依存的に放出されることが確認された。さらに、EGFR高発現ヒト胃癌細胞株MKN45を皮下移植した担癌マウスを用いた抗腫瘍効果試験の結果、ペプチド単体に比べ経口製剤では抗腫瘍効果の増強が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H28年度の研究計画の内容に関して、予定していた腸管吸収促進剤である胆汁酸を用いたハイブリッドペプチドの経口製剤調製ならびに、Caco-2単層膜を用いたin vitro透過試験において、経口製剤ではペプチドの透過量がペプチド単体に比べ有意に増加することが確認出来た。消化管内pH変動によるin vitro溶出性や安定性試験により、経口製剤が胃のpH条件下で安定性を示し、小腸のpH条件下ではペプチドが時間依存的に製剤から放出されることが確認出来た。さらに、EGFR高発現ヒト胃癌細胞株MKN45を皮下移植した担癌マウスを用いたin vivo抗腫瘍効果試験において、経口製剤ではペプチド単独を上回る抗腫瘍効果が確認出来ているため、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、正常マウスに対し、有効用量以上の高用量を含む用量設定を行い、血液一般検査及び生化学検査によって毒性の評価を行う。また、臓器の病理組織学的解析や体重、摂食量、行動など一般状態観察なども合わせ、毒性評価する。ペプチド静脈内投与後では血中ペプチド濃度が一過性に上昇するに対し、経口製剤ではペプチドが胆汁酸に包まれているので、経口投与後腸管上皮細胞膜から血中へゆっくりと透過させるため、急性毒性軽減の可能性が期待される。また、2次元単層培養法と3次元多重培養法における経口製剤の薬効評価の比較検討を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
H28年度には腸管吸収促進剤を用い静電的相互作用により作製したペプチド経口製剤ではペプチドの膜透過量が増加し、抗腫瘍効果が改善されることが確認できた。引き続き、次年度には経口製剤の安全性試験、2次元単層培養法と3次元多重培養法における経口製剤の薬効評価の比較検討を行う。
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次年度使用額の使用計画 |
H29年度の研究費の使用計画としては、次の項目で使用予定である。 EGFR2R-lyticハイブリッドペプチドの薬理作用を最大に発揮させ、臨床応用可能な経口製剤として創製するために、安全性試験の動物購入、保守費用等。細胞培養を行う上で必要な細胞培養用プラスチック及びガラス器具類、実験で必要となる試薬類等。その他として、研究成果発表のための費用等である。
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