我々はがん細胞を特異的に攻撃する新規分子標的化学合成ハイブリッドペプチドを設計し、これまでにin vitroとin vivoレベルでその薬効及び現行の抗がん剤と比較した優位性を明らかにしてきた。本研究では、従来からの消化管吸収促進作用を有する胆汁酸を用い、上皮増殖因子受容体(EGFR)を標的としたEGFR2R-lyticハイブリッドペプチドの消化管吸収性を改善させ、臨床応用可能な経口投与製剤として創製することを目的とした。EGFR2R-lyticハイブリッドペプチドのlytic部分はカチオンリッチなため、アニオン性の胆汁酸との静電的相互作用を利用した製剤検討の結果、ペプチドと胆汁酸の最適な混合比(モル比)が1:2であることが分かった。次に、ヒト結腸癌由来培養細胞株Caco-2を腸管モデル細胞として用いた膜透過試験の結果、経口製剤ではペプチド単体より透過量が多く、小腸内のpH条件ではペプチドが経口製剤から時間依存的に放出されることが確認された。さらに、EGFR高発現ヒト胃癌細胞株MKN45を皮下移植した担癌マウスを用いた抗腫瘍効果試験の結果、経口製剤では抗腫瘍効果の増強が確認された。
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