研究課題
薬物による腎尿細管間質性腎炎は、尿細管間質における炎症を起点として、腎実質の障害とそれに続く腎機能の低下や貧血など全身性の症状を惹起する。しかし、その発症機序はほとんど明らかにされておらず、科学的根拠に基づいた予防法及び治療法は確立されていない。そこで本研究では、腎臓外における炎症の存在が尿細管間質性腎炎発症の主要因であるという仮説を立て、薬物による尿細管間質性腎炎の発現機序解明を目標とした。はじめに、NSAIDsが関連する腎障害の実験モデルとして、ロキソプロフェン及びインドメタシンをマウスに経口投与し、腎臓への影響を観察した。しかし、これらのNSAIDsを8週間投与しても腎機能への明らかな影響は認められなかった。そこで、腎臓外における環境変化と腎実質の障害の両方が組み合わさることで尿細管間質性腎炎が生じると考え、NSAIDsを経口投与したマウスに腎毒性物質であるアリストロキア酸を腹腔内投与し、腎機能の変化を観察した。また、腸内環境の変化として抗菌薬の経口投与による影響についても検討を行った。その結果、アリストロキア酸処置後においてもNSAIDsによる腎臓への有意な影響は認められなかった。一方で、抗菌薬であるバンコマイシンを経口投与したマウスでは、滅菌水のみを投与したマウスと比較して、アリストロキア酸処置後の腎臓における線維化マーカータンパク質alpha-SMAの発現が抑制された。従って、腸内環境は尿細管間質性腎炎の重篤化に関与することが示唆された。
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Journal of Clinical Investigation
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Yakugaku Zasshi
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