研究実績の概要 |
これまでに我々は、プラスチック製医薬品容器に充填された注射薬中から重合開始剤1-hydroxycyclohexyl phenyl ketone (1-HCHPK)、methyl 2-benzoylbenzoate (MBB)および2-methyl-4’-(methylthio)-2-morpholinopropiophenone (MTMP)を検出した。インクや歯科用樹脂に使用されている一部の重合開始剤は内分泌かく乱作用を示すという報告があるため、我々が検出した重合開始剤とインクに頻用される重合開始剤である2,2-dimethoxy-2-phenylacetophenone (2,2-DMPAP)、2-ethylhexyl 4-(dimethylamino)benzoate (2-EHDAB)および2-isopropylthioxanthone (2-ITX)を含む6種類を用いて、エストロゲン様作用についてE-screen assayを用いて評価した。その結果、乳がん細胞株T47Dは、2,2-DMPAP、1-HCHPK、MBB、およびMTMP曝露によって有意に細胞が増殖した。また、2,2-DMPAP、1-HCHPKおよびMBBは、内因性エストロゲンである17 beta-estradiolに匹敵する細胞増殖効果を示した。さらに、抗エストロゲン薬(クロミフェン、タモキシフェンおよびフルベストラント)を前処置した後に各種重合開始剤を曝露させると、重合開始剤による細胞増殖効果が阻害された。以上の結果より、2,2-DMPAP、1-HCHPK、MBBおよびMTMPは、T47Dに対してエストロゲン様作用を示すことが示唆された。また、その作用は少なくともエストロゲン受容体を介していることが示唆された。
|