研究課題/領域番号 |
16K18943
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
河崎 陽一 岡山大学, 大学病院, 薬剤主任 (40582101)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 重合開始剤 / 注射薬 / エストロゲン様活性 / エストロゲン受容体 / 免疫不全雌性マウス / 推定腫瘍重量 |
研究実績の概要 |
昨年までに、プラスチック製医薬品容器に充填された注射薬中から検出した1-hydroxycyclohexyl phenyl ketone (1-HCHPK)、methyl 2-benzoylbenzoate (MBB)および2-methyl-4'-(methylthio)-2-morpholinopropiophenone (MTMP)の内分泌攪乱作用についてエストロゲン様活性を指標に評価した。その結果、乳がん細胞株MCF-7およびT47Dに対して3種類の重合開始剤はエストロゲン様活性を示した。また、各種抗エストロゲン薬(クロミフェン、タモキシフェンおよびフルベストラント)を前処置した後に3種類の重合開始剤をそれぞれ曝露させると、重合開始剤によるエストロゲン様活性が抑制された。このことより、3種類の重合開始剤によるエストロゲン様活性は、少なくともエストロゲン受容体を介した作用であることが示唆された。 また、がん細胞のみならず正常細胞に対する重合開始剤の影響を評価するために、正常ヒト子宮平滑筋細胞株hUtSMCを用いてエストロゲン様活性を評価した。その結果、正常細胞株はがん細胞株と異なる経路を介してエストロゲン様活性を惹起することから、がん細胞と同様の評価系では反応性を評価できなかった。そこで、エストロゲン反応性タンパクの1つであるCD38の発現量を指標に重合開始剤によるエストロゲン様活性を評価している。 さらに、in vivoにおいて、免疫不全雌性マウス(CAnN.Cg-Foxn1/CrlCrlj)にMCF-7株を移植した担がんマウスに対してMTMPを2週間連日投与(0.05-1.0 mg/day, 1 time/day)した結果、溶媒投与群と比較して有意に推定腫瘍重量が増加した。以上より、重合開始剤は生体内でもエストロゲン様作用を惹起することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成29年度より利用している正常ヒト子宮平滑筋細胞株hUtSMCに対する3種類の重合開始剤のエストロゲン様活性を評価してきたが、本細胞株のエストロゲン様活性を惹起する経路が、がん細胞とは異なることが判明したことで、本来予定していた評価系のみでは重合開始剤によるエストロゲン様活性を明確にすることが出来なかった。現在では、正常細胞株に対するエストロゲン様活性を明らかにするため、エストロゲン反応性タンパクの1つであるCD38の発現量を指標にウェスタンブロット法を用いて評価している。したがって、当初計画していた評価系以外の検討項目を追加したため、当初の予定より、やや遅れていると考える。 また、in vivoでは、当初MCF-7細胞株およびT47D細胞株の担がんマウスを作成して評価する予定であったが、T47D担がんマウスは、考案したすべての条件で生着しなかったことから、MCF-7担がんマウスのみの評価とすることにした。したがって、T47D担がんマウス作成の可否に関する基礎研究に時間を浪費したため、当初の予定より、やや遅れていると考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度に掲げた重合開始剤によるヒト正常細胞株に対するエストロゲン様活性ならびに平成29年度に掲げた免疫不全雌性マウスを用いたin vivoにおける重合開始剤のエストロゲン様活性の評価を継続しながら、平成30年度に掲げた重合開始剤のエストロゲン受容体への結合性、結合強度ならびにアロマターゼ活性の評価を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨冬頃に、年度末までに実際に研究可能な計画を再度立て、その中で必要な経費を捻出すると次年度使用額59円が発生した。残金と平成30年度交付額と合わせて、予定通り研究活動を継続していく。
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