研究課題/領域番号 |
16K18944
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
小山 敏広 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 助教 (60595106)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 血液凝固能評価系 / 生活習慣病 / 候補化合物 |
研究実績の概要 |
心房細動罹患者は心原性脳塞栓症リスクに曝されており,抗凝固療法を必要としている.一方,本罹患者は,出血リスクを有する生活習慣病(高血圧,糖尿病,脂質異常症)を患っていることが多く,これら病態が及ぼす抗凝固作用への影響についてはほとんど不明である.したがって,この問題の解決は生活習慣病を有する心房細動に対する効果的な治療法の提示に繋がる可能性がある.そこで,本研究では,動物レベルにおける血液凝固能評価系を構築し,つぎに,両疾病合併型モデル動物における抗凝固薬の薬効を明らかにすることを目的とする.さらに,易出血性を調べることで,同時に副反応に対する安全性も評価可能な系の確立を目指す. 生活習慣病自体が塞栓症や出血のリスクを高めることが知られているが,心房細動に対する新規抗凝固薬の薬効評価において,生活習慣病の影響を考慮した研究はほとんどない.さらに,高齢化に伴い生活習慣病合併心房細動の罹患者は増加することが予想される.このことから,生活習慣病が新規抗凝固薬の薬効に及ぼす影響を評価するための,血液凝固能評価系の必要性が改めて問われると考えた.しかしながら,これまで生活習慣病を考慮した血液凝固能の評価系構築は試みられていない.そこで,本研究では生活習慣病と心房細動を組み合わせ,新たな両病態合併症における血液凝固能評価系を構築することを目指す.さらに,その評価系を駆使して新規抗凝固薬の薬効評価および安全性を明らかにする. 平成28年度は血液凝固能評価の対象とする薬剤の探索を行うとともに血液凝固能の評価指標の検討を実施し、生活習慣病合併状態におけいて血液凝固能に著明に影響を与える薬剤を見出した。さらに、これらの抗凝固療法に影響を適切に評価するための動物実験モデルの最適条件を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在、動物モデルの条件探索は先行研究の調査によって明らかになりつつあり、血液凝固能評価系指標として、活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT),プロトロンビン時間(PT),トロンボテスト(TT)、生活習慣病の生化学指標として脂質系(HDL、LDL、トータルコレステロール)、血糖系(血糖値、ヘモグロビンA1C)、炎症系(C反応性タンパク)の指標をとりいれることで、血液凝固能評価と生活習慣病の関連を明らかにできることが明らかとなった。 さらに、生活習慣病を心房細動患者が合併していることはこれまで明らかにしてきたが、それらの疾患の治療に用いる薬剤が血液凝固能に及ぼす影響についても明らかにし、特定の薬剤が抗凝固療法に良い影響を与えることを明らかにした。これらの薬剤については、血液凝固能への影響がこれまで知られていない既存医薬品であり、既存医薬品の新規薬効につながる可能性が示唆されている。したがって、平成29年度ではこれらの薬剤についても、生活習慣病モデルにおける評価系の構築後速やかに、薬効評価を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、各生活習慣病モデルとして、それぞれ高血圧・糖尿病・脂質異常症モデル動物をもちいて検討を行う。これらの疾患モデル動物に関する基礎データは十分に確立されているため、本研究の評価系を円滑に実施できると想定している。 平成29年度 計画1:生活習慣病が及ぼす血液血液凝固能への影響評価 生活習慣病モデル動物における血液凝固能を評価し,生活習慣病が生理的な血液凝固能に及ぼす影響を正常動物と比較することにより評価する. 平成29年度 計画2:生活習慣病における抗凝固薬の有効性・安全性評価 H28年度に確立した血栓・出血モデルの条件を用い,生活習慣病における抗凝固薬の有効性と安全性を評価する. これらの生活習慣病において血液凝固能の変動に影響を及ぼす生化学的変化を明らかにすることを目標としている。さらに、計画が早く進んだ場合は、平成28年度に明らかにした、生活習慣病治療に用いる併用薬が心房細動における抗凝固療法に及ぼす影響を詳細に明らかにすることを目的としている。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度は、実験条件の探索に時間を要したため予定していた動物実験については計画通りできなかったことにより、当初予定より予算執行が少なくなっている。しかし、実験条件などは精度を高めることができたため、平成29年度は予定より研究計画通りに実施できる。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度は平成28年度の条件設定を慎重に行ったため、当初の計画よりも効率よく研究実施できると考えている。したがって、平成29年度は平成28年度に購入予定であった機器の購入ととともに計画通りの研究を実施する予定である。したがって、予定の予算を執行し、計画通り研究を遂行する。
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