研究課題/領域番号 |
16K18946
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
山本 奈々絵 九州大学, 大学病院, 薬剤師 (70770626)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 移植 / バイオマーカー / 個別化医療 |
研究実績の概要 |
免疫抑制薬タクロリムスの体内動態には大きな個人差があり、薬物代謝酵素CYP3A5の遺伝子多型がその個人差を制御する一要因であることが解明され、用量調節の個別化に有用な情報となっている。一方、タクロリムスに対する感受性にも個人差が指摘されており、目標血中濃度の個別化など薬力学的な個人差の克服が求められている。 本研究では、より質の高い術後免疫抑制療法の確立を目指し、C型肝炎ウイルスによる肝臓疾患を原疾患とする肝移植患者を対象に拒絶反応発現の個人差に関わる候補因子として新たに見出されたいくつかの分子(Immunomodulatory factors of hepatitis C reaction and rejection :IFR)に注目した。肝移植におけるドナー肝の体質(IFR遺伝子発現の差異)がレシピエントに及ぼす作用を解析することで、IFRの発現量の差や種類の差が肝移植後の拒絶反応予測のバイオマーカーとして利用可能か検討することを目的とした。 肝移植における急性拒絶反応には細胞障害性T細胞(CTL)とNK細胞が中心的な役割を果たしている。NK様培養細胞株KHYG-1と白血病細胞株k562を利用したkilling assay系を利用して、組み替えIFRを添加することにより、KHYG-1細胞の細胞障害活性が低下するかどうかを指標にIFRの細胞障害活性への影響を評価した。IFR存在下ではKHYG-1細胞の細胞障害活性は低下し、k562細胞の細胞死が回避される傾向にあることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
NK細胞の細胞障害活性の測定のためのNK様培養細胞株KHYG-1と白血病細胞株k562を利用したkilling assay系の構築と評価については概ね順調に進展している。一方、ウイルスベクターによるk562細胞へのIFRの発現は十分な発現が得られず、当初計画より遅れていると言わざるを得ない。
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今後の研究の推進方策 |
IFR存在下でk562細胞が細胞死を回避できた要因として、KHYG-1細胞の細胞死によるものか、または細胞障害活性の低下によるものかの区別をするため、IFRを発現させたk562細胞を用いて、NK細胞の抗ウイルス活性に関与するサイトカインやグランザイムBの産生について評価する。また、アフィニティクロマトグラフィーによりIFRに結合するタンパクの探索を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
組み替えIFRを大量に発注する予定であったが、年度途中退職者により譲渡されたため予定より購入量が少なかったことが挙げられる。また、2016年度は初年度ということもあり、研究成果が学会発表の水準にまでは達しなかった部分があり、学会などへの出張を行わなかったため、旅費が発生しなかったことが挙げられる。
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次年度使用額の使用計画 |
2017年度はIFRのリガンドの解析等を外注する予定であるため、2017年度分として請求した助成金と合わせてその経費とすること、学会への参加のための旅費に使用することを計画している。
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