研究課題/領域番号 |
16K18957
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
中澤 洋介 慶應義塾大学, 薬学部(芝共立), 助教 (60411708)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | アクアポリン / 白内障 / 水晶体 / 水チャネル |
研究実績の概要 |
本研究の最終目標は、“AQP0 を標的とした新規抗白内障薬を開発”することである。本科研費プロジェクトでは、AQP0 のもつ物質透過と細胞接着機能の調節制御機構を解析し、ジャンクションとしての役割を解明することで水晶体透明性維持機構および、水晶体内物質輸送機構を明らかにする。そこで、「①A Q P 0のチャネル機能の解明」・「②A Q P 0の細胞接着能、およびジャンクション機能の解析」の二本の柱を立てて、解析を行った。
平成28年度は、「①A Q P 0のチャネル機能の解明」の柱では、AQP0と相互作用する新規タンパク質の存在を二次元電気泳動により明らかにした。平成29年度は、このタンパク質相互作用が、AQP0の水透過能にどのような影響を与えるのかアフリカツメガエルの卵母細胞を用いた検討、および、L細胞を用いた検討により考察する。 また、「②A Q P 0の細胞接着能、およびジャンクション機能の解析」の柱では、AQP0の持つ細胞間接着能をGST pulldown法、およびフローサイトメーターを用いた検討より明らかにした。これらの結果は、水晶体透明性維持にAQP0の水透過機能だけではなく、細胞接着機能もまた重要であること、また、新規白内障発症メカニズムの可能性を示唆している。 平成29年度は、AQP0 を介した物質輸送が行われているか否かを探索し、AQP0 チャネルが“細胞間ジャンクション”としての役割を持つことを考察する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、AQP0の持つ細胞接着能について主に検討し、以下の3点を明らかにした。 1、AQP0同士の接着をGST pulldown法をもちいて検討した。その結果、AQP0同士の結合には、細胞外領域であるC-loopを介して行われていることが明らかとなった。 2、接着に必要なアミノ酸を検討した。その結果、C-loopの中のPro-Proアミノ酸配列が重要であることが明らかとなった。 3、C-loopの中のPro-Pro配列に変異を加えると、接着能は有意に低下するが、アフリカツメカエルの卵母細胞を用いた水透過能検討より、水透過能はほとんど変化しないことが明らかとなった。
本研究により、AQP0同士が直接結合することで、向かい合う細胞同士の接着をより強固にし、水晶体透明性を維持していることが示唆された(Current eye research; 掲載決定済み)。上記の検討は、本年度の研究が順調に進展していることを示している。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度に明らかとなった“AQP0と相互作用する新規タンパク質がAQP0チャネルに与える影響”をアフリカツメガエルの卵母細胞を用いた検討、および、L細胞を用いた検討により考察する。 また、”AQP0 を介した物質輸送が行われているか否か”をラジオアイソトープラベルされた低分子化合物あるいは、蛍光色素をもちいて検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品をより安価な業者から購入したこと、また平成28年度初頭において実験作業を優先させたため、学会参加を見送り、また論文執筆の時期を遅らせたことにより、当初予定より支出が少なかったことが挙げられる。
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次年度使用額の使用計画 |
消耗品代として、主として動物代(ラット代およびアフリカツメガエル代)とキット代を計上する。内訳は、GST pulldown法もしくは、免疫沈降法にラット水晶体抽出物を用いるための動物代あるいは、細胞接着性を検討するに用いる蛍光色素やラジオアイソトープ代である。 さらに、研究成果を学術論文に報告するための論文校閲料、あるいは、研究成果を国内外の学会にて報告するとともに、情報収集を行うための旅費を計上する。
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